もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

文字と絵の境目(3) (主に戦国武将のハンコ)

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【目次】

 

こんにちは。もじのすけです。

 

今回は、

「ハンコの文字当てクイズ」で

遊んでみましょう。

 

遊びながら、

文字と絵の境目について

考えてみたいと思います。

 

これまでハンコで遊んだ記事は、

 

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

  

この2つです。

 

 

今回も同じようにハンコの画像を見て、

誰のハンコかを当てて下さいね。

 

 

1 ハンコの文字当てクイズの遊び方

それでは、

「ハンコの文字当てクイズ」の遊び方を

ご説明します。

1 ハンコの印影を集める。

2 その印影を見る。

3 その印影に書かれた文字を当てる。

4 答えを見て、喜んだり、悔しがる。

以上終わり。

簡単です。

 

 

2 戦国武将ハンコの文字当てクイズ

 

これは絵?文字?という観点で

戦国武将のハンコの文字について、

一緒に考えていただきたいと思います。

 

ハンコの画像の出典は、

書の日本史〈第9巻〉古文書入門,花押・印章総覧,総索引

平凡社 初版 昭和51年)

P181~P184

です。

 

 

それではさっそく見てみましょう。

文字と絵の境目の検討ではありますが、

単純に遊んでみてください。

 

何と書いてあるか、

誰のハンコか、を当ててくださいね。

 

 

 

 2-1 第1問 

まずはこれ。

 

さあ、何と書いてあって、

誰のハンコでしょうか。

 

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読めますか。

右から読んでくださいね。

 

有名な武将とまではいえませんが

最近ちょっと有名になってきましたよね。

 

「おんな城主直虎」にも出てきますよ。

尾上松也さんが演じています。

 

この人は蹴鞠(けまり)が上手だと

言われていますね。

 

 

 

 

正解は、

 

 

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今川氏真 でした。

 

ほとんど文字だけの

シンプルなハンコですね。

 

www.nhk.or.jp

リンク切れ対策にこちらも。

尾上松也 - Google 検索

 

イケメンです。

役者が、ですが。

 

 

お父さんの今川義元

春風亭昇太さんが演じています)と

顔がだいぶ違いますね。

役者が、ですが。

 

www.nhk.or.jp

リンク切れ対策にこちらも。

春風亭昇太 - Google 検索

 

 

 

 2-2 第2問

それでは、次の問題。

 

何と書いてあって、

誰のハンコでしょうか。

 

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周りにちょっとだけ

絵が入ってきましたよ。 

 

これも読めるでしょう。

 

 

正解は

 

 

 

 

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伊達政宗 のハンコで

政宗」でした。

 

 

 

 2-3 第3問

それでは

これはどうでしょうか。

ちょっと難しくなりましたよ。

 

名前ではありません。

歴史好きには有名なハンコです。

 

何と書いてあって、

誰のハンコでしょうか。

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1文字目は「天」 

2文字目は「下」

 

 

 

 

 

 

 

 

3文字目は「布」 

4文字目は「武」

 

有名な「天下布武」のハンコです。

 

 

最近の研究では、

「天下」は畿内近畿地方内)を

指すと言われているようですね。

この人が本能寺で亡くなった当時、

畿内のかなりの部分を制圧し、

日本統一も時間の問題だった

といってよいでしょう。

 

正解は

 

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織田信長 で

天下布武」のハンコでした。

 

 

だいぶ文字が崩れてきましたね。

絵の要素が増えているように思います。

 

 

 

 2-4 第4問 

それでは、これはどうでしょうか?

 

何と書いてあって、

誰のハンコでしょうか。

 

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問題で出しておきながら

無責任な話ですが、 

何と書いてあるか

私にはわかりません。

読めた人は教えてください。

 

ヒントは

さっきの武将を倒した人です。

 

倒す前に

京都の愛宕山の寺院で開かれた

連歌会の中で

「ときは今 あめが下しる 五月かな」

という歌を詠んだ武将です。

 

 

正解は、

 

 

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明智光秀 のハンコでした。

 

歌の説明はこちら。

愛宕百韻 - Wikipedia

 

それにしても

菱形のハンコは珍しいですね。

 

このハンコに何が書いてあるのか

読めますか?

 

私は読めませんが、

上半分は「秀」の字ではないのか

とずっと思っていました。

でも下半分が読めない。

 

そう思っていましたが、

今回の記事を書くにあたって

何度かしげしげと見つめると、

ひょっとしたら、ですが

思いつきました。

 

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上半分が「秀」、

下半分は、

逆さから見て「光」ではないか。

そう思えてきました。

 

自信はありません。どうでしょうか。

 

 

ここまでくると

ハンコの形といい、

文字の形といい、

かなり絵的になっていますね。

 

 

 

 2-5 第5問 

それでは、これはどうでしょうか?

2つまとめてどうぞ。

この2つのハンコはどちらも

2人の戦国武将が使っているので、

正解する率は2倍ですよ。

 

 

さて、何と書いてあって、

誰と誰のハンコでしょうか。

 

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これだけでわかるという人は

かなりの人でしょう。

優秀な文字脳をお持ちですね。

 

あまりに難しいと思いますので、

誰と誰のハンコか、について

ヒントです。

 

 

 

正解のうちの1人の戦国武将は

軍神の生まれ変わりとまで言われ、

もじのすけが今年推している武将です。

 

もう1人は、その後継者です。

昨年のNHK大河ドラマ真田丸では

優柔不断な性格の人として描かれ、

最終回まで出演していましたね。

 

 

どうでしょうか。

 

 

正解は

 

上杉謙信 と 

上杉景勝 でした。

 

 

 

 

 

 

さて誰のハンコかがわかったとして、

何と書いてあるのでしょうか。

 

これが難しい。

 

左のハンコを再び示します。

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かすれていますが

左のハンコに書いてあるのは

上の突起部分が「立願」です。

 

右1行が「勝軍地蔵」

中央1行が「摩利支天」

左1行が「飯繩明神」

(いづなみょうじん)

だそうです。

言われてみれば

そう読める気もします・・・。

 

将軍地蔵、摩利支天、

飯繩明神(権現)

いずれも軍事の神仏として、

武家から厚く

信仰されていたようです。

 

 

右のハンコは・・・。 

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阿弥陀 日天 弁才天だそうです。

もじのすけが見たところ、

真ん中1行の2文字が「日天

左1行の最後が「天」

後は・・・正直わかりません。 

 

本当に右1行は「阿弥陀」ですかね?

2文字に見えますので。

右1行は「阿弥」でしょうか。 

中央1行が「日天」「陀」でしょうか。

左1行は

1文字目が「弁」

その左斜め下に「才」、最後が「天」

でしょうか。

 

ここまで来ると

もはや文字があるというより、

全体として絵だと見て

よいように思います。

 

そうはいいながらも

これらのハンコに

文字がないとはいえません。

また、

その文字は重要な意味を

持っています。 

 

これらのハンコは、

文字と絵が共存しつつ

かなり融合した形態だ

といってよいでしょう。

 

 

 

 2-6 まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

戦国武将のハンコの

文字当てクイズをもとに、

文字と絵の関係を見てきました。

 

どうやら

ハンコの文字は

だんだん崩れてくると

絵と融合していくようですね。

 

 

 

3 おまけ(花押と花押印)

 

戦国武将のハンコによく似たものとして 

「花押(かおう)」があります。

 

上杉謙信の花押を見てください。

 

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 上越市史 別編1 上杉氏文書集一 別冊(編集:上越市史編さん委員会 発行:上越市。平成15年)P147

 

どうですか。

結構、伸びたり、はねたり、

カクカクしていたりして、

絵的な感じがしますよね。

デザインされている印象を強く受けます。

 

上杉謙信の花押は、

何という字が書いてあるのか、

それとも字ではないのか、

はっきりしません。

 

花押の系譜・歴史をたどれば、

判読できるのかもしれませんが、

私にはわかりません。

 

皆さんは 

これらの花押を見て、

どんな感想をもちましたか。

 

 

私は、以前から

上杉謙信の花押を見ていて

以前から、

「書状の最後に筆で書くにしては

 難しいなあ。

 失敗したらどうするのだろうか。」

と思っていました。

 

ですが、この疑問は

米沢市上杉博物館のサイトの写真を見て

解決しました。

 

みなさんも、ぜひ見てください。

[伝国の杜]米沢市上杉博物館/コレクション展「はんこにする?サインにする? -上杉家印章-」

 

そこには、

今回の第5問の印影に対応する

ハンコが載っています。

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左に対応するハンコが、

重要文化財「上突部付朱円印」

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(上記米沢市上杉博物館のHP内 

http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/013hanko.htm

 

右に対応するハンコが

重要文化財「鼎形朱印」 だそうです。

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(上記米沢市上杉博物館のHP内 

http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/013hanko.htm

 

そして、

これらのハンコの画像の下に、

あっ!こんな画像が!

 

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重要文化財 上杉謙信花押印

(上記米沢市上杉博物館のHP内 

http://www.denkoku-no-mori.yonezawa.yamagata.jp/013hanko.htm

 

上杉謙信の花押は、

筆で書いたのではなく、

花押のハンコ(花押印)

押していたのです。

(但し、同じ方の花押でも

 いろいろなものがあり、

 全部花押印を押したとは

 断言できません。

 このあたりのことは

 原本を見ないとわかりません。)

 

一般に

署名(サイン)は、

自己を表す名称を手書きすること、

と言われています。

(厳密には手でなくてもよいでしょう。

 手が不自由な人は口や腕や足で

 書くこともありますし。

 身体を使って書くこと、が

 核心部分だと思います。)

 

花押の定義は多義的のようです。

ネットで見ても、

①署名だとすることも

②署名の替わりだとすることも

あるようです。

②の方が一般的な理解だと思います。

 

それでは、

花押を手書きしたり、

花押印を押したりした人は、

どういう意味の行為を

したことになるのでしょうか。

 

①花押を署名(サイン)だとした場合は

こうなります。

 

花押を手書きした人は、

署名(サイン)をした、

と見てよいでしょう。

他方、

花押印の印章を紙に押して

花押の印影をつけたら、

署名(サイン)をしたとは

言えないでしょう。

 

 

次に 

②花押を「署名の替わりに用いる記号」

とするならばどうでしょうか。

 

花押を手書きで書いても

署名(サイン)ではなく、

署名(サイン)に替わる記号を

書いたということになるでしょう。

 

他方、

花押印の印章を紙に押して

花押の印影をつけたら、

やはり、

署名ではなく、署名に替わる記号を

ハンコで紙につけた、

ということになるでしょう。

 

花押、花押印、ハンコ、署名、押印

など、

こんがらがってきましたか?

 

ハンコ・署名がらみのお話は

また別の機会に

整理して説明しましょう。

 

 

それでは、本日はここまで。 

おつかれさまでした。

 

 

 

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 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000

 

   

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