【目次】
こんにちは。もじのすけです。
なぞってみたシリーズの
第4弾です。
今回は、
第1弾の豊臣秀吉の字をなぞってみた
第2弾の織田信長の字をなぞってみた
第3弾の夏目漱石の字をなぞってみた
とは異なり、
有名人の名前を伏せてみます。
皆さんは、
書を見て、有名人の名前を
当ててみてください。
その後に、
なぞってみた感想を
お話ししたいと思います。
今回は
かなりなぞりがいのある
手書き文字ですよ。
皆さんも、もしよかったら
ぜひなぞってみて下さいね。
1 文字なぞり遊びのおさらい
毎度のことですが、一応文字なぞり遊びの
おさらいをしておきますね。
段取りは以下のとおり。
1 有名人の公開された手書き文字を
紙にコピーする。
2 紙上の手書き文字をなぞる。
3 なぞってその人の性格を感じる。
以上終わり。
あっさりするほど簡単です。
2 文字なぞり遊びの注意点のおさらい
続いて、権利関係で
知っておくべきポイントは
以下のとおり。
公開された手書き文字と
それを載せている媒体
(出版物、HPなど)が、
適法に公開されたものであれば、
誰の手書き文字であっても
それを紙にコピー(複製)して、
自分でなぞって楽しむ限りでは、
著作権法上適法です
(私的使用のための複製
著作権法30条)。
この結論だけは知っておいてください。
3 この書を書いた有名人は誰?
それでは、早速見てみましょう。
3-1 問題
この書状を書いた有名人は
誰でしょうか?
(題名と署名は画像外)
どうでしょうか。
グーグル先生の画像検索に頼っても
出てきませんよ(確認済み。笑)。
かなりの達筆です。
しかも、かなりのびやかです。
これでわかった方はすごいです。
書道経験があると
わかるかもしれませんね。
3-2 第1のヒント
それでは第1のヒントです。
文の内容と訳です(共に横書き)。
学道参禅失本心
歌漁一曲直千金
湘江暮雨楚雲月
無限風流夜々吟
【もじのすけ勝手訳(誤訳御免)】
学問や禅では本質を見失う。
漁師が歌う一曲にこそ
千金の価値がある。
(普段見ているこの景色は、)
まるで(中国の)
湘江の暮れの雨と
楚の国の雲月のようだ。
この限りない風流を
(私は)毎夜吟じている。
・・・どうでしょうか。
字といい、書いている内容といい、
かなりの文化人ですね。
でも、文の内容がわかっても
筆者が誰かは、わかりませんよね。
3-3 第2のヒント
それでは、ちょっと外部情報を。
主に京都にいた人で、
天皇の子供と言われています。
その名前を知らない人は
ほとんどいないほどの
超有名人です。
3-4 第3のヒント
僧です。
室町時代の人です。
そろそろ当たりそうですね。
3-5 最後のヒント
最後のヒントです。
諸外国、とくに中国では
最も有名な日本人の僧でしょう。
アニメのキャラクターとして。
ネット界隈では
槇原敬之に似ていると
言われているみたいですね。
4 解答
一休さん でした。
一休宗純 - Wikipedia より。
紙本淡彩一休和尚像(重文)
実際の性格をよくご存知の方も
多いと思いますが、
アニメのイメージとは
ずいぶん違いますね。
イメージのギャップが
起きた理由は
こんな風に解説されています。
幼少期は頓知小僧で、青年期に厳しい修行を積んで名僧となったという逸話が多い。子供向けの物語では、特にこの傾向が強い。また、幼少期の逸話には頓知で和尚や足利義満をやり込める話が添えられることが多い。これは『一休咄』と史実の一休を一つの物語にしており幼少期については史実から遠いと言えるが青年期以降のエピソードのみでは堅い話となるので、親しみを持たせるためにこのようにしたと思われる。
5 なぞってみた
それでは、
一休さんの字をなぞってみた感想を
お話しします。
書は、「漁父」という歌でした。
一行目の下の方に
「一休筆」と書いてあります。
出典
「書の日本史〈第4巻〉室町・戦国」(今井庄次編)
(平凡社 初版 昭和51年)P109、110
まず、わかるのは、
字がものすごくうまい
ということです。
素人の私が、
くずした字だけで書の腕前を
見極めることは難しいです。
ですが、
比較的くずしていない字を見ても
一休さんが達筆なのは明らかです。
5-1 くずしていない字からわかること
本文1行目の「學」「失」
2行目の「歌」「直」「千金」
3行目の「暮」
最終行の「吟」
美しいです。
どの字をとっても惚れ惚れします。
「暮」などは
ゲームのラスボス感、
仏画のご本尊感すら漂います。
5-2 くずした字からわかること
続いてくずした字では、
どうでしょうか。
1行目の「本心」
「心」が躍動しています。
2行目の「漁」
「漁」は書き終わりの
つなぎの線まで美しく、
次の「一」まで続けて
挙げる必要を感じます。
つなぎの線は、
活字では存在しない線です。
ですが、ここでは、
明らかに美しい存在として、
目に飛び込んできます。
これを見て、私は自分が
活字に慣れることによって
美しい存在を見落としている
という事実に
初めて気がつきました。
そして、
今回の文書における
くずし字のラスボスは、
なんといってもこれ。
最終行の「風流」でしょう。
どうして
「風」がこうなるのか。
これを「流」といって
いいのか。
私にはわかりません。
もはやイッてしまっているとしか
言いようがありません。
一休さんの真骨頂でしょう。
6 全体をなぞってわかったこと
文の内容といい、
文字といい、
一休さんは、
とてつもない教養と修練の
積み重ねを見せています。
そして、
この1つの書の中で、
常識と狂気を見せています。
一休さんは、最初の方は
がまんして字を丁寧に書いていて
字をくずしていませんでした。
がまんの最初の表れは
本文1行目「道」の
しんにょうの一画目の点です。
見て下さい。
しんにょうの一画目の点が
「つ」の逆の形になって
存在をアピールしています。
私たちが普段書くときでも、
省略しがちな点に
逆に存在感が出ています。
その後、一休さんは
だんだん、
がまんできなくなっています。
くずしが増え、
ついには「風流」で
どこかの世界に行ってしまいました。
その後まもなく
最後の「吟」で
現実世界に戻ってきました。
なぞってみて
そんな印象を受けました。
見てわからないことも
なぞるとよくわかります。
指でなぞっていた時間は、
「私にはこの線は書けない。」と
終始思い続けることになりました。
一休さんが積み重ねた修練の凄み、
そして自由になった後の飛躍が
伝わってきました。
ロックのことを
よく知らないので
言っていいのかどうかも
わかりませんが、
直感的には、
一休さんはロックな人
だなあと思いました。
調べてみると、
やはり武勇伝が多いようです。
なぞったり、調べてみると
新たな一休さんが
見えてくるかもしれませんね。
一休さんの書からは、
抽象的・概念的にも
新しく学ぶことが多かったです。
それはまた別の機会に
お話ししようと思います。
7 おまけ
一休さんは、
臨済宗大徳寺派の僧です。
大徳寺の源流となる
中国の虚堂智愚という高僧を
とても尊敬していたようで、
自分を「虚堂七世の孫」と
書くことを好みました。
それで今回の書の署名も
「虚堂七世孫純一休筆」
と書いているようです。
ちなみに
虚堂智愚の書は名筆として、
お茶の世界では有名だそうですね。
一休さんの書は
かなりなぞりがいのある
手書き文字でした。
皆さんも、もしよかったら
ぜひなぞってみて下さいね。
今回はこれまで。
おつかれさまでした。
上杉謙信の手書き文字から作った
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