もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

あの人の字をなぞってみた(4)【性格読み取り編】(ネタバレあり)

 

 

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【目次】

 

 

1 今回はなぞってみた感想

 

こんにちは。もじのすけです。

 

前回の記事は、

なぞってみたシリーズ第7弾の

【クイズ編】でした。

その中で、

直筆の問題文の書き手である

有名人を当てるクイズと正解を

ご紹介しました。

 

今回は、

クイズの問題に出した書状をもとに、

その有名人の字を

なぞってみた感想

(有名人の性格の読み取り)を

書きたいと思います。

 

ネタバレがありますので、

知りたくない人は、

この記事をここで止めるか、

前回の記事を先にお読み下さい。

 

前回の記事はこちら。 

mojinosuke.hatenablog.com

  

 

(ネタバレが嫌な人はここまで)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2 あの人の文字の特徴

 

 2-1  あの人の情報と書状

前回の記事の書状を書いた人は、

浄土真宗の宗祖とされる

親鸞 でした。

 

 ShinranShonin.png

安城御影」(西本願寺蔵) Wikipedia親鸞」より。

 

なお、この記事では、

歴史上の人物として扱うため、

「聖人」「上人」などの尊称や

敬語を付けないことにします。

 

ということで今回の裏タイトルは

親鸞の字をなぞってみた

です。

 

 

親鸞の業績はこちらをご覧ください。

親鸞 - Wikipedia

親鸞(しんらん、承安3年4月1日 - 弘長2年11月28日 [注釈 5])は、鎌倉時代前半から中期にかけての日本の浄土真宗の宗祖とされる[注釈 6]

 

法然を師と仰いでからの生涯に渡り、「法然によって明らかにされた浄土往生を説く真実の教え[1]」を継承し、さらに高めて行く事に力を注いだ。自らが開宗する意志は無かったと考えられる。独自の寺院を持つ事はせず、各地に簡素な念仏道場を設けて教化する形をとる。親鸞の念仏集団の隆盛が、既成の仏教教団や浄土宗他派からの攻撃を受けるなどする中で、宗派としての教義の相違が明確となり、親鸞の没後に宗旨として確立される事になる。浄土真宗の立教開宗の年は、『顕浄土真実教行証文類』(以下、『教行信証』)が完成した寛元5年(1247年)とされるが、定められたのは親鸞の没後である。

 

さすが、宗祖とされる人は 、

Wikipedia上で、

業績がとても詳しく記載されています。

800年前の人物なのに

熱心に慕われていることが、

伝わってきますね。

 

書状の全体の画像と釈文を

以下に示します。

 

もじのすけは、

ボールペンで3回、ペンで1回、

なぞりました。 

 

なぞったことがない方は、

もしお時間があれば、

指でもいいので、

是非なぞってみて下さいね。

 

 

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いずれも

「書の日本史〈第3巻〉鎌倉/南北朝」(今井庄次編)

平凡社 初版 昭和50年)P156、157

釈文は菊池勇次郎氏のものを

引用させていただきました。

なお、本文・釈文ともに文中の一部に

現在では不適切とみられる表現がありますが、

文書の内容を検討するため、

そのままの記載を引用しております。 

 

 

(もじのすけ勝手訳。誤訳御免)

阿弥陀仏偈和讃  愚禿親鸞

南無阿弥陀仏

阿弥陀様が成仏されて、

今で10劫を経られました。

阿弥陀様の法身のご威光は無限で、

世の迷える人を照らしています。

 

 

親鸞がこの書状を書いた時の年齢は

75歳!

当時の平均寿命からすれば

明らかに高齢者といえるでしょう。

 

親鸞は、

一体どんな人で、どんな心境で

この書状を書いたのでしょうか。

 

親鸞の手書き文字をなぞってみて感じた

特徴を見ていきましょう。

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 2-2  特徴1 字が太く濃いが筆離れはよい

まず挙げられる特徴は

全体的に字が太く濃い、

ということです。

 

ですが、

いずれの字も「とめ」の溜めは

ある程度しっかりしていますが、

重くはなく、

スピード感があります。

 

「はね」は大きいですが、

勢いよくはねている感じです。

 

筆離れはよさそうです。

 

例えば題名の「讃阿弥陀仏和讃」。

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比較の参考になる字として、

以前の記事

あの人の字をなぞってみた(3)【性格読み取り編】(ネタバレあり) - もじのすけ の文字ブログ

の人の手書き文字があります。

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(引用元は上記前記事に記載)

 

この人の字も、

親鸞と同じように太く濃く、

「はね」も大きいです。

(例:「清」)

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ですが、

「とめ」の溜めが重いです。

(例:「石」)

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さらに、右「はらい」なのに

とめたり、

(例:「敬」「水」「八」)

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なぜか左にはねたり。

(例「状」)

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とにかく

じっくり書いてあり、

筆離れが悪くしつこいです。

親鸞の字とは

似ているようで違います。

 

 

親鸞

読む人の読みやすさを第一に考えて、

太く大きく字を書いたように思います。

自分の気持ちを

熱くじっくり書いたのではなく、

筆離れがよく、

キビキビとした感じがします。

 

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 2-3  特徴2 くずし字がない

この書状には、

くずし字がありません。

 

この書状は1247年に

書かれたものですが、

770年後の私たちが読んでも

それほど読みにくくありません。

 

以前の記事で

比較的読みやすい字と言えば、

あの人の字をなぞってみた - もじのすけ の文字ブログ

の人の字や

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(引用元は前記事に記載)

夏目漱石の字をなぞってみた。 - もじのすけ の文字ブログ

でご紹介した夏目漱石の字があります。

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 (直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ヴィジュアル版 6V)

 の68ページの一部)

 

 

用途が違うとはいえ、

これらの字と比べても、

今回の親鸞の字が

1番読みやすいといえるでしょう。

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 2-4  特徴3 読みやすさの工夫がてんこ盛り

この書状には、

文字が大きく、太く、濃いという

工夫の他にも、

読みやすさへの工夫が見られます。

 

  2-4-1  本文の全文にフリガナ

まず本文の全文にフリガナが

付けてあります。

その中で、特に指摘したいのは

この連続した2行です。

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右は念仏でしょう。

左側から本文が始まります。

 

右側にフリガナ無しで

南無阿弥陀仏」と書いてあります。

そして、左側の

「弥陀 ミタ」「仏 フチ」

と字が重複しています。

 

そうすると

左側の本文の「弥陀」「仏」は、

フリガナを打つ必要はないのに

わざわざ打っている

ということがわかります。

 

  2-4-2  意味まで書いてある

親鸞は、フリガナを付けるだけではなく、

難しい用語の意味を左側に

カタカナで付記しています。

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  2-4-3  行間が広い 

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行間が広く取ってあります。

フリガナや意味の付記などを振りやすく

しているだけでなく、

ひたすら読み上げやすく

しているのでしょう。

 

  2-4-4  テンポ・リズムがよい

本文を平仮名で書くとこんな感じです。

みだじょうぶつのこのかたは

いまに10こうをへたまへり。

ほうしんのこうりん、きわもなく、

よのもうみょうを、てらすなり。

 

親鸞の今回の文は、

詩的に改行をしており、

文章のテンポ・リズムが良いです。

これも読みやすさに

つながっていると思います。

 

話が飛びますが、

もじのすけが

仕事で関わっている人達の中で

飛び抜けて

読みやすい文章を書く人がいます。

その読みやすさの秘訣を

知りたくなって、あれこれ考えて、

その人に質問したりしました。

 

その結果、判明した

読みやすさの秘訣は

何だと思いますか。

 

それは

「文章を読み上げて推敲している」

ということでした。

 

自分の書いた文章を声に出して読む。

すると、

誤字脱字を発見できます。

論理のズレや説得力も見えてきます。

(説得力が無いときは

 声が小さくなります。)

 

そうやって文章を推敲していくと

自然にリズム感が出るのです。

 

その秘訣を知って以来、

もじのすけも重要な文章を書くときは、

読み上げるようにしています。

 

その視点で親鸞の文を読んでみると、

明確なリズム感があります。

 

まあ、今回の「和讃」というのは

讃美歌みたいなものなので、

当然といえば当然、

ともいえそうです。

 

ですが、

今回の書は原典があり、

その内容を紹介するもののようです。

通常の解説文の形式でもいいのに、

あえて、歌の形式をとったところに、

親鸞の強い意欲を感じます。

 

そのような事情を知らなくても、 

親鸞の書いている文章(改行)には

テンポ・リズムの良さが表れています。

 

親鸞が、日々、発声したり、

声に出して文を読んだり、

人に言葉を伝えることを意識した

人物であることがうかがえます。

 

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  2-4-5  読みやすさの工夫がてんこ盛り

このように、

親鸞の字の書き方は

読み手への読みやすさの工夫を

随所に見せています。

 

 

 2-5  特徴4 勢いがある

親鸞の字には勢いがあります。

例えば右への伸ばしが長く、

「はね」が大きい。

 

(例:「禿」「親」の最後)

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(例:「光」「陀」「モ」)

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他の字にも、

勢いの特徴があります。

 

カタカナの「リ」が

内側ではなく外側に反り返る。

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「ノ」「ナ」「ク」が長い。

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「口」が開いている。

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しっかり書いているのに、

口のどこかは開いています。

 

自分に勢いがあり、

ガチガチに理論武装しても、

相手を追い詰めすぎず

どこかに逃げ道を作ってあげる。

そんな親鸞の包容力が伝わってきます。 

 

 

3 文字の特徴から読み取れる性格 

 

今回の親鸞の手書き文字には、

(1)字が太く濃いが筆離れはよい

(2)くずし字がない

(3)読みやすくする工夫がてんこ盛り

(4)勢いがある

という特徴がありました。

 

この特徴からは、

・75歳にして頭脳も身体も丈夫。

・積極的でサバサバとした性格

・サバサバしつつ、

 他人への配慮が細やか

・きっちりこだわる所が多いが、

 人の弱さへの包容力もある

という

親鸞の性格が浮かび上がってきます。

 

さばさばして多少がさつだけど

超エネルギッシュで、

弱い人へのいたわりも半端ない

おじいさん

という印象です。

 

このブログでは

親鸞の宗教上の業績の意味を

探求するつもりはありません。

ただ親鸞の人物像に迫るのみ、です。

 

今回の字の特徴からは、

親鸞

驚異的な気力・体力と

弱い人への優しさ

を感じます。

 

最晩年期まで、

あるいは、

亡くなる瞬間まで

やりたいことが残っていた人

ではないかと思いました。

 

 

 

4 おまけ ~ コフ? クワウ? ~

 

カタカナは発音を表すので、

当時の発音をうかがい知る

資料になります。

例えば

「十劫」の「劫」の読みは

「コフ」

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「光輪」の「光」の読みは

「クワウ」

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どちらも現代では、

「コウ」と読みますが、

当時は読み分けていたのかも

しれませんね。

 

実は・・・、

藤原定家のころには、

音韻とは無関係に、仮名遣いを

使い分けるようになったようです。

仮名遣い - Wikipedia

音韻の違いと無関係に語によって使い分ける「仮名遣い」が初めて起こるのは、鎌倉時代藤原定家の著『下官集』からである。

藤原定家親鸞よりも10歳年上で、

1162年に生まれ、

1241年に亡くなっています。

藤原定家 - Wikipedia

 

今回の書が作成されたのは、 

1248年。

微妙な時期です。

 

そうすると

親鸞の今回の書よりも

定家の「下官集」の方が早いので

影響が有ったか無かったか?

 

つまり、

今回の書の当時

「コフ」と「クワウ」は

違う発音だったのか?

それとも

同じ発音になっていたものを

書き分けていたのか? 

 

親鸞

念仏を唱え、

発声を大事にする人だと思われます。

 

そうすると

今回の書は、音韻どおりの

使い分けだったのではないか。

つまり、「コフ」と「クワウ」は

違う発音だったのではないか

と推測しています。

(厳密には日本の言語史を

 調べればわかるとは思いますが)

 

 

ちなみに 

このような昔の発音の手がかりは、

カタカナだけではありません。

安土桃山時代だと

キリスト宣教師の報告書などの中で、

アルファベットを使って

固有名詞が書かれたものがあります。

現代の私たちは

アルファベットで見ると

当時の発音をさらに追跡できると思います。

 

例えば

ルイス・フロイスの日本史からは、

織田信長によって焼き討ちに遭った

比叡山(ひえいざん)が

当時「ヒエノヤマ」と

発音されていたことがわかっています。

フロイス日本史 - Wikipedia

Wikipediaにはその記述はありません。)

 

鎌倉時代ではありませんが、

戦国時代の人たちの読む、書く、話すについて

高度な内容を比較的わかりやすく

書いた本として、

1冊だけご紹介します。

www.kawade.co.jp

 

 

以上おまけ終わり。

 

 

5 おわりに

 

今回は75歳のときの

親鸞の手書き文字でした。

 

あの文字の力強さ、配慮からすると

亡くなったのが

さらに14年も経った89歳!

という事実にも

納得がいきます。

 

みなさんが読み取った

親鸞の性格は

どうだったでしょうか。

 

見るだけでもわからなくはないですが、

文字なぞりをすると

はっきり見えてきますよ。

 

私だけの感覚かもしれませんが、

人の書をなぞらせてもらうと、

御本人の気品を

分けていただいたような気がして、

身が引き締まる感じがします。

 

また、もじのすけとしては、

今回、小さなことではありますが、

「文章を書くためにも発声は大事」

と、教わったように思いました。

 

ともあれ

感じ方は人それぞれ。

気になったら、

ぜひ、過去の記事の人でも

試してみてくださいね。

 

たくさんの本を読むより

少ない資料を何度もなぞる方が

理解が深まる。学べる。

そんなことがあるかもしれません。

 

今回はここまでとします。 

おつかれさまでした。

 

 

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 上杉謙信の手書き文字から作った

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 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000

 

 

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