もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

手書き文字と活字の違い(16) ~文字の客体性 主体は誰か?~

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柳橋図屏風

Period:Momoyama period (1573–1615)
Date:early 17th century

(原本はNYメトロポリタン美術館蔵)

 

 

【目次】

 

 

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もじのすけです。

 

1 前回までのおさらい

 

今回は、

タイトルどおり、 

文字の性質のうちの

「文字の客体性」

を検討します。

 

その検討の中では、

客体性のある文字を

出現させる主体は誰か?

について

お話ししたいと思います。

 

抽象的なことを先に言うだけでは

わかりにくいと思います。

 

前回までのおさらいから入って

具体的に話を進めていきましょう。

 

それでは 

前回までのおさらいをします。

 

・活字には、

 毛筆・硬筆の手書き文字ほどの

 情報量がないから

 増やす方法を考えてみよう 

 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2016/11/02/193000#6活字の表現伝達機能の増量

 

 ・そもそも活字にはどんな情報が

 載っているのだろうか

   

・活字には弱い感情情報がある。

 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/30/180000#2-1活字の感情情報

 他には?

  

・公共性のある活字を使っているので

 ①話題の公共性を示す書き手の意図

 がある。

 手書き文字と活字の違い(13) ~活字が表す情報②~ - もじのすけ の文字ブログ

  

・あとは

 ②文字(活字)に表れた情報の存在感。

 手書き文字と活字の違い(13) ~活字が表す情報②~ - もじのすけ の文字ブログ

 他には?

  

・活字の場合、匿名性があるが、

 わずかながら

 ②書き手の存在感が「ある」

 手書き文字と活字の違い(14) ~活字が表す情報③~ - もじのすけ の文字ブログ

 

・その書き手の存在感を

 深めて考えてみると

 文字は無かったところから

 ある瞬間に「出現」する

 (文字の出現性)

 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/05/18/160000#4文字の出現性客体性時間性

 

・手書き文字は1画1画の、

 活字は1字1字の、

 時間の流れの中で出現する 

 (文字の時間性)

 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/05/18/160000#4文字の出現性客体性時間性

 

・文字は誰かが出現させている

 (文字の客体性)

 その出現させる主体は誰か? 

  ↑

 今ココ

 

です。

 

それでは、

今回も大事なお話です。

 

文字の客体性について

主体が誰か?を検討していきましょう。

 

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2 文字の客体性 

 

文字は、ひとりでに

この世に出現することは

ありません。

誰かによって出現させられます。

文字の客体性

 

それでは、

文字がある瞬間に出現するとして、

誰が出現させるのでしょうか。

文字の主体は誰か?

 

手書き文字と活字に分けて

考えてみましょう。

 

今回の記事では

「手書き文字の主体」

を検討します。

 

次回の定期更新記事では

「活字の主体」

を取り扱います。

 

それでは考えてみましょう

手書き文字の主体は誰でしょうか?

 

 

3 手書き文字の主体 

 3-1 手書き文字の主体は人

手書き文字は、

ほとんどの場合、人が書きますよね。

ということで

たいていの手書き文字の主体は

「人」でしょう。

 

身体の不自由な「人」が

腕や足や口で書くこともあるでしょう。

それでも

「人」が書くことには

変わりがありません。

 

ここで、

「ほとんどの場合、人が書く」

という私の最初の言い方が気になった

という人がいるかもしれません。

 

実は、ここで

いくつかの問題が生じます。

猿などやロボットが

「手書き文字」を

出現させることです。

 

猿については

どう考えたらよいでしょうか。

 

 3-2 手書き文字の主体は猿?

 

文字ではなく写真のケースですが、

似たような問題が

発生したことがあります。

 

写真家がカメラを用意し、

猿がそのリモートスイッチを使って

自撮り写真を撮ったというケース

です。

 

これがその写真です。

 
Wikipediaより。
マカク属のサルの「自撮り」("selfie")

 

この写真の作者は誰か?

人間の写真家か?猿か?

著作権者は誰か?

ということが問題となりました。

 

サルの自撮り - Wikipedia

 

サルの自撮り(さるのじどり、英語:monkey selfies)とは、メスクロザルが自然写真家デイヴィッド・スレイターカメラを使って自撮りした写真のこと。この写真はウィキメディア・コモンズにアップロードされ、2014年半ばに大きな話題を呼んだ。人間以外の動物による作品に著作権は発生するのかが問題となったのである。スレイターは自身に著作権があると主張したが、著作権を持つのはその作者であり、人間以外(法律上の人ではない)の作者は著作権では保護されないという考え方のもと複数の専門家や組織から反駁された。2014年12月、アメリカの著作権庁は人間以外の動物による作品はアメリカにおける著作権の対象とはならないと宣言した。2016年、アメリカの連邦裁判所は、サルは画像の著作権を有しないと判断した[1]

2016年1月現在において、スレイターはこれらの写真につき自身に著作権があるとの主張を継続している[2]

 
原典を確認していませんが、

アメリカの裁判所が判断したのは

・人間以外が作った作品は

 著作物ではない

・この作品を作ったのは猿だ

・この作品に著作権は発生しない

ということのようです。

 

これは写真のケースでした。

少なくとも

「猿が」写真を撮ったということは

認められているようです。

 

それでは文字の場合はどうでしょうか。

 

例えば、

猿が地面などにめちゃくちゃに

線を書いている時に

たまたま、

「ソ」「ン」「リ」の字とかが

出現することはあるでしょう。

(ナイツの漫才をイメージしました)

 

これは文字でしょうか。

さっきの写真のケースとは違い、

そもそも

猿が文字を書いたといえるのか、

を検討しなくてはなりません。

 

 

私の考えはこんな感じです。

 

猿は、

文字としての意味を込めて

地面に線を書いたのではない。

 

ですので、

・その字は文字とはいえない

あるいは

・猿が文字を書いたとはいえない

と考えてよいでしょう。

 

実は

ここには深い問題が控えています。

 

偶然、文字のような線が地面に

浮かび上がっていても、

文字に言葉としての情報を

載せていないのであれば、

文字を書いたとは言えないでしょう。

 

 猿が偶然にも

「クソソソ」や「クリリン

と読める線を引いたとき、

「クソソソ」や「クリリン」は

文字といえるのでしょうか。

 

「文字の形なんだから文字でしょ。」

という人がいるかも。

反対に

「いや、文字として書いてないから

 文字じゃないでしょ。」

という人もいるかも。

 

どちらの説もあり得るでしょう。

 

ただ、どちらにしても

猿は意味を込めて

「クソソソ」「クリリン」とは

書いていない。

 

その意味では

・猿が文字が書いたとはいえない

とはいえるでしょう。

 

「人間以外が文字だと思わずに引いた

 文字の形の線は、文字なのか?」

は深い問題です。

多分、言語学上の研究が

あると思います。

別の機会に検討することにしましょう。

 

 

 

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Artist:Georges Seurat (French, Paris 1859–1891 Paris)
Date:1884

(原本はNYメトロポリタン美術館蔵)  

 

 

 3-3 手書き文字の主体はロボット?

動物はよいとしてもさらに

問題となるケースがあります。

 

ロボットです。

 

次のサイトを見てください。

ロボットがペンを持って

字を書いています。 

wired.jp

 

このサービスでは、

まず、ユーザーが

パソコンやスマホなどの画面上に

活字を出現させているといえます。

 

そして、

その活字が

手書き文字フォントに変換され、

ロボットがそれを

紙に印字しているのでしょう。

 

このサービスの場合、

誰が手書き文字を出現させたと

考えればよいのでしょうか。

 

もう少し分析してみましょう。

 

このサービスは、

まずユーザーが活字を打つ。

その活字プログラムデータが

コンピュータ内で発生します。

 

そして、その活字データが

コンピュータ内で

手書き文字フォントデータ

(「お手フォン」)に

変換されているのでしょう。

 

さらに、

ロボットがお手フォンデータを

紙に印字しているのでしょう。

人間の手のような動きをして。

 

つまり、

「ユーザーが画面上に活字を出現させ、

 ロボットが紙に手書き文字を

 印字する。」

  

人間の手の動きをするから

紛らわしいですが、

よく考えてみると、普段

みなさんがパソコンで打った活字を

プリンターで印字するのと

あまり変わりませんね。

 

その意味では、

画面上の活字

 → ユーザーが主体

プリントされた文字(手書き文字含む)

 → プリント指令を出した人が主体

となります。

 

ということで、結論としては、

手書き文字を出現させる主体は

その文字を書いた「人」が多い。

 

手書き文字ロボットを使う場合も、

手書き文字を出現させる主体は

プリント指令を出した「人」です。

 

もう1つ

強調しておきたいのですが、

このサービスの字は、

本当は

手書き文字ではなく、

「手書き文字フォント(お手フォン)」

の字です。

手書き文字に近い自然感になるように

手書き文字フォントを

きれいに並べたものです。

 

隣り合った

筆記体のアルファベット同士は、

何らかの形で

なるべく続け字になるように

1文字の書き始めと書き終わりを

調整しているのでしょう。

 

その意味では、

実はこの話は

お手フォンの印字の話であって、

手書き文字の話ではない。

 

「手書き文字」のコーナーで

紹介する話ではない

のです。

 

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Artist:John Singer Sargent (American, Florence 1856–1925 London)
Date:ca. 1890–95

(原本はNYメトロポリタン美術館蔵)

 

 

 3-4 手書き文字の主体は人工知能

 

ここで、

「AI(人工知能)が書いたらどうなるの?」

と思った方がいるかもしれませんね。

AIが手書き文字を直接書く技術は

今のところ確認できていません。

多くの場合は活字でしょう。

 

ですので、

AIについては、

次回の定期更新記事の中で

活字の問題として

検討したいと思います。

 

 

4 手書き文字の主体は「人」 

 

いずれにしても、

手書き文字は「誰か」によって

出現させられる。

 

つまり

手書き文字には

「客体性」があり、

その主体は今のところ、

「人」だけと言ってよいでしょう。

 

次回は、

「活字の主体は誰か?」

について検討してみましょう。

それでは、  

おつかれさまでした。

 

 

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