もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

文字と媒体の関係(1)と(3)中間まとめ ~手書き文字の衰退~

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【目次】

 

(冒頭の作品)

Dish with Heron Design

Period:Edo period (1615–1868)
Date:late 17th century
Culture:Japan
Medium:Porcelain with underglaze blue decoration (Hizen ware, Nabeshima type)
Dimensions:H. 1 1/8 in. (2.9 cm); Diam. 5 5/8 in. (14.3 cm)

Dish with Heron Design | Japan | Edo period (1615–1868) | The Met

 

 

 

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もじのすけです。

 

 

1 これまでのおさらい

 

 

今回は文字と媒体の関係について

「中間のまとめ」を

書きたいと思います。

 

「文字と媒体」シリーズでは、

これまで

 (1)手書き文字

 (3)活字

の2つについて、

それぞれ

 ①紙の原本

 ②紙への写し

 ③電子媒体

の段階に分けて説明しました。

 

これをまとめた図はこちらです。

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図の矢印の順に振り返ってみましょう。

 

(1)①手書き文字の紙は

7世紀(600年代)から

本格的に流通しました。

文字と媒体の関係 (1)①手書き文字の紙 - もじのすけ の文字ブログ

 

(1)②手書き文字の紙の写しは、

615年頃の法華義疏に始まり、

7世紀(600年代)に出回り始め、

江戸期に、瓦版が発達した結果

本格的に流通しました。

文字と媒体の関係 (1)②手書き文字の紙の写し - もじのすけ の文字ブログ


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(3)①活字が直接印字された紙は、

1590年代に流通が始まり、

一旦衰えました。

その後、西洋式の

近代活版印刷技術の導入により、

明治初期から本格的に流通しました。

文字と媒体の関係 (3)①活字が直接印字された紙 - もじのすけ の文字ブログ

 

(3)②活字の紙の写しは、

1960年代、

コピー技術の発達ととともに

本格的に流通しました。

文字と媒体の関係 (3)②活字の紙の写し - もじのすけ の文字ブログ

 

f:id:mojinosuke:20171002183412p:plain

 

ここから、活字は、

手書き文字のときにはなかった

さらなる進化を遂げます。

 

電子媒体が登場するのです。

 

(3)③電子媒体上の活字は、

1990年代に、

インターネットや

パソコンの発達にともなって

本格的に流通しました。

文字と媒体の関係 (3)③活字の表示の電子媒体 - もじのすけ の文字ブログ

 

そして、

(1)③電子媒体上の手書き文字は、

2000年代から

スキャナの発達とともに

本格的に流通しました。

文字と媒体の関係 (1)③手書き文字の表示の電子媒体 - もじのすけ の文字ブログ

 

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2 わたしたちが接する文字と媒体

 

さて、ここからは、

皆さんに、少し考えながら

読んでいただこうと思います。

 

今の時代に

普段私たちが接している文字は、

この図のどこの部分の文字でしょうか。

 

考えてみてください。

 

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「全部、普段から見ているよ。」

という人もいるかもしれません。

ですが、少数でしょう。

 

多くの人は、

こんな感じではないでしょうか。

 

一番見ることが多い文字は、

スマホタブレット・パソコンの

画面上の文字。

すなわち、

(3)③電子媒体上の活字。

 

次に見ることが多いのは、

チラシや広告など、

各種の紙の資料。

その資料の文字でしょう。

すなわち、

(3)①活字の紙の原本。

 

そして、そのコピーである

(3)②活字の紙の写し。

 

この3つではないでしょうか。

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もう1回書きます。

 

(3)③電子媒体上の活字

(3)①活字の紙の原本

(3)②活字の紙の写し

 

ちょっと見てください。

 

全部活字 です。

 

手書き文字である、 

(1)①手書き文字の紙の原本

(1)③電子媒体上の手書き文字

も流通はしていますが、

全体の流通量からすればわずかです。

 

特に、圧倒的な量で流通し、

私たちの目に一番ふれているのは

(3)③電子媒体上の活字

でしょう。

 

今まさに、皆さんが見ている

この文字が

(3)③電子媒体上の活字

ですよね。

 

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3 「活字離れ」はミスリード

 

私はこのブログの第2回の記事

(実質的には第1回の記事)で

「活字離れ」を話題にしました

 

そして、

「活字離れ」というキーワードが

スリード

という話をしました。

 

昨今では

「活字離れ」が起きているとか

言われることがあります。

 

ですが、

現代に生きる私たちは、

スマホなどで活字を見続けています。

 

つい先日、

私がいつも読ませていただいている

BEのぶさんのブログ

「昭和考古学とブログエッセイの旅へ」

の記事で、

中国語圏で

「低頭族」 という言葉が

使われている話を知りました。

 

parupuntenobu.hatenablog.jp

 

要するに

スマホをのぞき込んで

 頭を下げている状態の人」

を指すようです。

私も低頭族に所属しています。

 

もちろん、

低頭族に入っている人でも

動画・ゲームをしている人も

いることでしょう。

ですが、そんな人でも

活字を見ずに済ませている人は

ほとんどいないでしょう。

 

 やはり、今の人は

「活字離れ」どころか

「活字べったり」  

です。

 

 

 

「活字離れ」だと言われて

問題視されているのは、

媒体の切り口から説明すると、 

下のようになるでしょう。

つまり

(3)③電子媒体上の活字 の隆盛

(3)①活字の紙の原本 の衰退、

(3)②活字の紙の写し の衰退、

のことでしょう。

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それは、

「活字離れ」ではなく

「紙離れ」

でしょう。

 

 

(「活字離れ」を読み方の切り口から

 解説した第2回の記事はこちら。) 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

今回の

「文字と媒体の関係」シリーズで

歴史的な変化を見れば、

日本人が急に活字を

使い始めたのではないことが

わかります。

 

明治期からずっと活字の紙を使い、

1990年代に

ネット・パソコンの発達とともに

電子媒体上の活字へと移ってきた

ということです。

 

つまり、

(3)①活字が直接印字された紙 や

(3)②活字の紙の写し から

(3)③電子媒体上の活字 へと

媒体が変化したことを示した用語が、

「活字離れ」なのです。

(ミスリードですので

 本当は「紙離れ」ですが)

 

 

 

4 手書き文字の衰退とその理由 

 

前の章では、

「活字離れ」をキーワードに

活字の話ばかりしてきました。

 

それでは、今、手書き文字は

一体どんな状態にあるのでしょうか。

 

次の表の

(1)手書き文字のラインの状況を

見てみましょう。

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最近発達したものから見てみましょう。

(1)③電子媒体上の手書き文字。

 

例えば、考えられるのが

・手書き文字の文書のPDF化

・デジタルコミックで、

 マンガの吹き出しや絵に

 使われている手書き文字

 

これらは、2000年から

本格的に流通していますが、

全体から見れば、

流通量が多いとは言えません。

 

 

次に、(1)①手書き文字の紙。

 

例として考えられるのは、

有名人のサインや、

自分の署名、日記やメモ、

書店のポップ。

授業のノートやテスト、

くらいでしょうか。

 

全体の流通量からすると、

手書き文字の紙の

流通量(厳密には出現量)は

少なくはないものの、

多いともいえません。

 

しかも減少する傾向にあります。

 

このブログを読んでいる方でも

「最近、手書きで文字を書くことが

 めっきり少なくなって、

 漢字もだいぶ忘れちゃったなあ。」

という人は多いことでしょう。

 

また、

郵便物の宛名や自分のメモ以外に、

手書き文字を読むことも

確実に減っていることでしょう。

 

 

 

最後に、

(1)②手書き文字の紙の写し。

 

これは

試験対策のノートのコピーくらい

ではないでしょうか。

これも流通量が少ない。

 

ということで、

手書き文字を入れて

図にするとこんな感じです。

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以上見ていただいたように

要するに、

手書き文字の流通量は

少ない

です。

 

これはなぜでしょうか。

 

1つの答えとして

考えられるものは、

やはり下の表の中にあります。

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見てください。

 

明治期から

(3)①活字が印字された紙

が発達しました。

そして

明治期以後は、文字のメインが

手書き文字から活字へと

移っています。

 

そして、今では、

(3)③電子媒体上の活字が

隆盛を極めています。

 

一応、2000年から

(1)③電子媒体上の手書き文字も

出現してはいますが、

現時点では発展の兆しは見えません。

 

「活字離れ」という言葉も

活字の電子媒体の隆盛による

「活字」の「紙離れ」を

示すにすぎません。

日本人の主な関心は、

(3)③電子媒体上の活字

の周辺だけにあります。 

 

つまり、

明治期から、徐々に

日本人の関心は

(1)手書き文字 から

(3)活字 へと移り、

その状態が

150年近く続いているのです。

  

150年間も離れてきているから、

日本人の手書き文字への関心が

ますます薄れてきているのです。

 

(なお、世界的な傾向については、

 移行の時期は違いますが、

 手書き文字への関心の薄れは

 同様だと推測しています。

 話のテーマが散るので、

 このブログではしばらくは

 検討しないことにします。)

 

シリーズを読んでこられた方は

実感されていると思いますが、

再三挙げている図は

もじのすけが独自に考えた分類です。

 

もじのすけの分類での

文字と媒体の関係の歴史観からすると

以下の結論になります。

 

明治期に、日本人は

手書き文字から活字へと関心を移した。

その後は

活字の媒体の変化へと関心を移し、

手書き文字を次第に忘れつつある。

 

つまり

「手書き文字の衰退」

が起きています。

 

そもそも

私がこのブログを開設したのは、

手書き文字の良さ(情報量のすごさ)を

発見して、

感動したことがきっかけです。

 

(そのことを書いた記事) 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

手書き文字には良さがたくさんある。

だからこそ、

私は手書き文字の衰退を

食い止めたい、

何とか残したいと思っています。

 

というか、

衰退の現状を逆手にとって

手書き文字を

むしろ発展させたい

と思っています。

 

 

 

手書き文字の良さのうち

「情報量の多さ」について

書き始めた初期のブログ記事は

こちらの3つです。


mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

 

 

 

5 まとめ

 

はっきり言って、

手書き文字は衰退しています。

 

「手書き文字を残したい?

 それじゃあどうするんだ?」

「現代のこの現象は、

 もじのすけの図のどこの話か?」

という疑問を持たれた人が

おられるかもしれません。

 

このあたりの話を

次回以降にしていこうと思います。

 

おつかれさまでした。

  

 

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古代エジプトの葬祭用コーン(使用方法は不明)

Funerary Cone of the Fourth Prophet of Amun Montuemhat

Period:Late Period
Dynasty:Dynasty 25–26
Date:ca. 712–525 B.C.
Geography:From Egypt, Upper Egypt, Thebes, Khokha, MMA excavations
Medium:Pottery

Funerary Cone of the Fourth Prophet of Amun Montuemhat | Late Period | The Met 

 

 

 

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