もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

あの人の字をなぞってみた(6)

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【目次】

 

(冒頭の作品)

メガホン(Megaphone)

Date:possibly 18th century
Geography:Republic of Congo & Angola
Culture:Congolese
Medium:wood

Megaphone | Congolese | The Met

 

 

 

 

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もじのすけです。

 

1 はじめに

 

今までの流れからすると

肩すかしの感もありますが、

今回は 

なぞってみたシリーズです。

 

ある文書の画像を出します。

その書き手が誰なのかを

当ててください。

 

答えは歴史上の有名人です。

 

目で見てもわからないときでも、

その人の手書き文字をなぞってみたら

当たるかもしれません。

 

当たらなくても、

なぞってから答えを知ると、

なぞった印象での書き手の性格と

皆さんが今まで持っていた

その有名人のイメージとが

大きく違っているかもしれませんよ。

 

 

これまでの名前を伏せた

なぞってみた記事はこちらです。

サムネイルで気になったものがあれば

寄り道して下さいね。

 

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

 

2 クイズのやり方

 

歴史上の有名人の

手書き文字ばかりですから

「あの人はこんな字を書くのか!」

と実感していただいたら、

記事にした甲斐があるというものです。

 

皆さんも

お時間があれば、 

ぜひ、この記事の画像をプリントアウトして

なぞってみて下さいね!

 

ここで恒例のご注意を2つ。

 

  

3 文字なぞり遊びのおさらい

 

問題に入る前に、 

毎度のことですが、一応文字なぞり遊びの

おさらいをしておきますね。

 

段取りは以下のとおり。

1 有名人の公開された手書き文字を

  紙にコピーする。

2 紙上の手書き文字をなぞる。

3 なぞってその人の性格を感じる。

以上終わり。

あっさりするほど簡単です。

 

 

 

4 文字なぞり遊びの注意点のおさらい


続いて、権利関係で

知っておくべきポイントは

以下のとおり。

 

公開された手書き文字と

それを載せている媒体

(出版物、HPなど)が、

適法に公開されたものであれば、

誰の手書き文字であっても

それを紙にコピー(複製)して、

自分でなぞって楽しむ限りでは、

著作権法上適法です

(私的使用のための複製

 著作権法30条)。

 

この結論だけは知っておいてください。

 

 

 

5 この書を書いた有名人は誰?

 5-1 問題

さあ、お待たせしました。

いよいよ問題に入りましょう。

この書を書いたのは誰でしょうか。

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(出典の引用は本文末に記載)

 

拡大します。出だしの半分です。

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最後の半分です。 

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どうでしょうか。 

 

けっこうクセある筆跡ですね。

今回も「わかるか!」

という声が聞こえてきそうです。

 

でもこの人の筆跡を知っている人は、 

もうわかってしまったかも。 

 

なおこの書状の一番左には、

宛名と書き手の名前があります。

これらを載せると

答えになってしまいますので、 

手前で切った画像にしています。

 

 

 5-2 ヒント1

今回は、

やさしいヒントにしましょう。

 

文字から読み取れる情報をもとに

ヒントを。

出だしの半分。

三行目の下の方。

「伏見」と書いてあります。

見つかりましたか?

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どうでしょうか。

これでわかった人は、勘が鋭い。

 

 

 5-3 ヒント2

ヒントが簡単なので

テンポよくいきましょう。

 

6行目の1番上の文字。

「皇」と書いてあります。

読み取れましたか。

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「伏見」「皇」

んんっ?

バレたかな。

 

 5-4 ヒント3

次は後ろの半分から。

2行目一番上の文字は「錦」。

その次の文字は「旗」

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「伏見」「皇」「錦」「旗」。

 

んんん?

どうでしょうか?

ずいぶん絞れたのでは?

 

でも関係者は少なくないですよ。

その関係者の中でも

とりわけ有名な人です。

 

 5-5 ヒント4

後ろ半分。

2行目最後の文字は「本」、

3行目一番上の文字は「陣」。

つまり「本陣」。

4行目の最初の2文字は「官軍」。

最後の行は「正月三夜」

つまり一月三日。何年かは書いてない!

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正月に「軍」とはぶっそうですね。

 

 

 5-6 ヒント5

 

釈文です。

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釈文には

(慶応四年)と書いてありますね。

これ自体大きなヒントですね。

 

釈文を訳してみます。

 

(もじのすけ勝手訳 誤訳御免)

 

今日はおしかりを受けるべきとは

考えておりますが、

戦の指揮を任されていたところに、

たまりかねて伏見まで行ってしまい、

ただ今帰ってまいりました。

初戦の大勝は、皇運が確立し、

誠にめでたいことにございます。

兵士の進退は実に心のとおりで

非常に驚きました。

追討将軍の件はいかがでしょうか。

明日は錦の御旗を立てて

東寺に本陣を置いて下さるのであれば、

官軍の勢いは一層増すことで

ございましょうから

何卒ご尽力下さいますよう

手を合わせてお願い申し上げます。

「頓首」(伏してお願いいたします。)

正月三日

 

(以上勝手訳終わり)

 

官軍を任され、

本来伏見まで行ってはダメなのに、

戦況が気になって

前線の伏見まで見に行った指揮官。

 

さあ誰でしょうか。

 

 

 5-7 最終ヒント 

最終ヒントです。

 

書状の最後はこれです。

宛名と差出人の名前です。

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「大久保一蔵様」「〇〇〇〇〇」

「要詞」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6 正解

 

正解は、

明治維新の立役者

西郷隆盛(吉之助)

でした。

 

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エドアルド・キヨッソーネ作の版画
(西郷の親戚を参考に想像で描写)

西郷隆盛 - Wikipedia より

 

 

あまりに有名なため、

この記事では説明は省略します。

歴史物の解説や資料は

たくさんあると思いますので、

そちらをご覧下さい。

 

来年のNHK大河ドラマ

西郷どん」の主人公ですね。

www.nhk.or.jp

 

 

7 文字なぞりのススメ

 

なお、

今回の問題に使わせていただいた画像は

いずれも

「書の日本史〈第7巻〉幕末維新 」(今井庄次編)(平凡社 初版 昭和50年)

P200、201から、

釈文は井上清氏のものから、

引用させていただきました。

 

西郷隆盛の手書き文字は、

特徴的です。

 

どこが特徴的か。

手書き文字から見える

西郷隆盛の性格はどうか。

これらについては

【性格読み取り編】で検討しましょう。

 

 

今回のうちに特に強調したいのは、

書状の内容です。

鳥羽伏見の戦いの初日(1月3日)から

薩長を中心とする官軍は、

旧幕府軍に大勝利。

 

大久保利通への戦勝報告からは、

西郷隆盛の控えめながらも

隠しきれない高揚感が

伝わってきます。

 

西郷さんの感情や性格を

【性格読み取り編】で検討。

これをいつ書くかは気分次第です。

 

その時までに、

ぜひ西郷さんの手書き文字を

なぞってみてください。

 

文字をなぞらせてもらうと、

時代、性別を超えて

気持ちが伝わってきます。

 

歴史の事実を慎重にたどる方法だと、

歴史上の人物の業績に注目しがちです。

 

もう少し積極的にたどると

その人物の性格を特定することは

あるかもしれません。

 

ですが、

その時その時の気持ちまでは

なかなか探求されませんし、

解説されていません。

 

ややもすると、心の中は、

小説家の創作の領域だと

思われがちです。

 

でも考えてみてください。

 

当たり前ですが、

歴史上の人物も

私たちと同じ人間です。

思い・感情を持って

日々を生きていたはずです。

 

手書き文字は

その人のその時の思い・感情を知る

一次的な資料です。

 

資料は読む人を選びません。

コピーなら原本を傷つけません。

興味を持った人なら

誰でも読んで親しむ資格があります。

 

読み取る人によって

感想は違ってくるかもしれません。 

ですが、

それでいいじゃないですか。

その人にとってはそれが真実です。

 

 

歴史上の人物の感情に

触れてみませんか。

 

 

なぞらなくても感じ取れますが、

なぞると一層感じ取れますよ。 

 

 

今回なら、 

西郷隆盛

 高揚感と性格が

 感じられる」かも。

 

 

そういうわけで、やっぱり

文字なぞりはオススメ

です。

 

 

おつかれさまでした。

 

  

 

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Transverse Flute in D-flat

Date:1760–90
Geography:South Germany or Saxony, Germany
Culture:German
Medium:Hard-paste porcelain, gold-plated brass

Transverse Flute in D-flat | German | The Met

 

 

 

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