もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

文字とことばの関係 ~ネットスラングから考える~

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【目次】

 

(冒頭の作品)

Astronomicum Caesareum
Artist:Michael Ostendorfer (German, (?) ca. 1490–1549 Regensburg)
Author:Petrus Apianus (German, active 1526–40) , German, 1495–1552
Printer:Georg and Petrus Apianus (German)
Date:May 1540
Medium:Hand-colored woodcuts
Dimensions:17 7/8 × 12 11/16 × 1 5/16 in. (45.4 × 32.3 × 3.3 cm)
Classification:Books

Michael Ostendorfer | Astronomicum Caesareum | The Met

 

 

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もじのすけです。

今日は「文字とことばの関係」についてお話ししようと思います。

 

(まずは最近の内情の告白から)

最近仕事で多忙な状態が続いておりまして、ブログを書く時間をまとめて確保しにくくなっています。

 

「ネタはあるけど文字ブログの記事のボリュームは小さい」

 

こんな状態が続きますが、なんとか乗り切って、読みやすい記事をご提供したいと思います。

 

 

1 視界に入ってくる文字

 

みなさんは、電車に乗ったり、外を歩いたり、お店に入ったとき、スマホをしているとき、何らかの文字が視界に入っていますよね。

 

たとえば、外を歩くときには店の看板や広告、信号の表示。

 

駅や電車の中にいるときなら、駅の案内や、電光掲示板に映る次の電車の情報や、車内広告。

 

 

車を運転するときにはスピードメーターやギヤの文字、交通標識の表示など。

お店なら看板やメニューが目に入っていることでしょう。

 

スマホを使っているときは、確実に文字表示がどこかに入っています。

ゲームだけをしている人でも、場面や得点関係の表示を見ていることでしょう。

 

「文字が視界に入っているかどうかだって?そんなこと意識していないよ!」

 

そんな人もいるでしょう。でも、考えてみてください。

今このブログを読んでいるのですから、確実に文字が視界に入っていることでしょう。

 

こんな風に、私たちは起きてから寝るまで、ほとんどの時間、視界に文字を入れながら生きています。

 

例外は、スキューバダイビング、ハイキング、田畑などでしょうか。

自然の中にいれば文字を見ないことはありえます。

 

ですが、気づかぬうちに、農業機械や農機具の文字表示や、一緒にいる人のウェアや装備の文字が視界に入っています。

また、ハイキングなら迷子にならないように案内表示があったりします。

 

文字から逃れたいなら、いちばん確実な方法は、

 

目をつぶる

 

これしかありません。

 

 

 

2 視界に入る文字は不自然か?

 

みなさんの視界に入ってくる宣伝や看板の文字。

みなさんはどのように意識して暮らしていますか。

私の場合は特に気にしていません。

無意識のうちに文字が視界に入りこんでいます。

 

反対に、自分から文字を読む場合はもちろん意識しています。

新聞や書類を読んだり、ネットでニュースを見たりしているときは、文字を視界に入れていることを意識しています。

 

つまり私たちは、あえて意識しなければ、「自分の視界に文字が入り込んでいる」という事実に気づかないのです。

 

想像してみてください。

 

あなたが電車に乗ろうと思い、駅の階段からホームに出て、ホームで適当に立っているとしましょう。

 

ベンチの上、線路の向こう側などあらゆるところに広告の文字が見えます。

文字が視界に入っている状態です。

ですが、あなたが広告に興味を持っていなければ、特に気にすることもないでしょう。

 

例えばこんな感じ。 

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ボーっとしている場合は省いておきます。

このときあなたが無意識でいられるのはなぜでしょうか。

 

もちろん「興味がない」ということが一番大きな理由でしょう。

けれどもその理由をもう少し深めると、こんなことが言えるのではないでしょうか。

 

①意識して見ていないけれども、広告や看板の文字は誰かが作ったことばになっている。

②その誰かが書いたのであろう何らかのことばが広告や看板に書いてあるのだろうけれども、あなたはそのことばを含めて広告や看板に興味がない、いちいち読む気がない。

 

①②を意識することはないでしょう。ですが、あなたがホームを歩いていて見える看板に、例えば、商品の画像と高橋一生さんのイメージ姿が映っていたとします。その姿と一緒に、こんなことばが書いてあったらどうでしょうか。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 

 

 

 

3 くぁwせdrftgyふじこlp

 

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

この文字列は、知っている人はよく知っている、知らない人は何のことかわからない。そんな文字列です。

 

知らない人のために説明しますと、「くぁwせdrftgyふじこlp」はネット上で使われる独特の表現。いわゆる「ネットスラング」です。

 

Wikipediaで見てみましょう。

くぁwせdrftgyふじこlp - Wikipedia

 

くぁwせdrftgyふじこlpとは、インターネットスラングの一つであり、文字に起こすことが困難な、言葉にならない悲鳴などの表現に使われる言葉である[1]。そのため本来音読不能であるが、語中の平仮名より「ふじこ」とも呼称される。Microsoft IMEなどのインプットメソッドにおいては、英字の部分は全角で入力される。

つまり、ことばにならない悲鳴として使われていました。 

 

私が見たことがあるのは「うわなにするくぁwせdrftgyふじこlp」が多かったです。

 

こんな無秩序に見える文字列ですが、いちおう規則性があります。

QWERTY配列キーボードを用い、フルキーの3段目と2段目を交互に入力すると文字列「qawsedrftgyhujikolp」が得られるが、ローマ字かな変換モードの日本語入力でこう入力したときに変換されて出来る文字列がこれである。一般にはフルキーの左端、「Q」のキーに右手の中指を、「A」のキーに同じく人差し指を置き、そのまま右に指を滑らせることで入力できると紹介される。

 
QWERTY配列。キーボードの「Q」のところに右手の中指、「A」のところに右手の人差し指をおいて左から右へスライドさせると「くぁwせdrftgyふじこlp」となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

つまりキーボードで右手の中指と人差し指を「Q」「A」の2列の段で左から右へと横になぞると「くぁwせdrftgyふじこlp」が出てくるようです。 

  

概要
初出は2ちゃんねるの「キーボードの上から三段目と四段目を二本指で左からダーすると」というスレッドからとされている[2]。ネットスラングとして広まったため、『電車男』などインターネットやオタクを題材とした作品、漫画・ゲーム・ライトノベル内でもたびたび使用され、2005年には、はてなキーワードからの転載という形で『現代用語の基礎知識2006』にも収録された[3]。

この文字列は、2005年頃からのものなので10年以上前から使われていた表現のようですね。

 

ネット上では、2年前の段階ですでに死語と言われていたようです。

jyugeru-09.com

死語の8位にランキングされています。

なお、元になる記事はR25というネット雑誌の記事だったのですが閉刊してしまい、今は閲覧できないようです。

 

ところが、死語と化したかのように言われていた「くぁwせdrftgyふじこlp」は、まだ使われていました。

 

今年に入って声優の東山奈央さんが正しく発音をされたようです。

【ゆるキャン】「くぁwせdrftgyふじこlp」の正しい発音が判明 : まとめダネ!

こちらの動画に発音が出ているようです。

動画の紹介が適法な引用といえるかどうか怪しいのですが・・・。

 

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

このネットスラングは、今もなお使われている文字列(ことば?)です。

ちなみに私は東山奈央さんのように発音できません。

もしかすると発音できれば「ことば」とも言えるかもしれません。

ですが、多くの人にとっては発音できないただの「文字列」でしょう。

 

 

4 文字とことばの関係  

 

話が横道にそれたようですので、元に戻します。

 

駅のホームを歩いているときに、ホームから見える広告に、商品の画像と高橋一生さんの姿が映り、高橋一生さんの姿の横に「くぁwせdrftgyふじこlp」と書いてあった場合を考えていたのでした。

 

この文字列を知っている人も知らない人も、「懐かしい」「なにこれ」「変なの」などそれぞれの理由で目を向けることが多いでしょう。

 

なぜ目を向けるのか。それはこの文字列が、「ことば」であるかどうか疑わしく、ある意味かなり気持ち悪いからです。おそらく高橋一生さんのイメージとは合いにくく、「異様な文字列」として視界に入ってくることでしょう。「くぁwせdrftgyふじこlp」の文字列は、広告を見る人に大いなる違和感を与えることでしょう。

 

この記事でも、ことば以外の文字列を試してみましょう。

キーボードを適当に複数の指でなでてみて erpikmd;lk3p@]aerg,rkpf@]aworgmkae[ps;

私の文章に しゃえpじゃそpgkw」ふぇわじふぁw:fじゃwp:えじょあw:おpj まぎれ込ませて あsじぇろ;えwじふぁ:をいえjf:あwぺfじょpw:

みましょう。

 

上の文章+アルファを見ていると、われながら「気はたしかか?」と心配になってきます。

これだけでもずいぶん違和感がありますよね。この違和感からは、私たちが普段どれだけ意味のある文字列(ことば)に接しているかを実感します。

 

文字を書いたり、文字をキーボードで打つ人が文字を世に出すときは「意味を持ったことばとして文字を並べることが圧倒的に多い」という事実に行き当たります。

 

私もふだんブログ記事を書いているときは、「文字」=「ことば」として使っています。

 

ですが、今回見ていただいたように、「文字」は「ことば」を作るための道具ではありますが「ことば」そのものではありません。

「文字」は並べ方によっては「ことば」でないものをも作ることができます。

 

その意味では、本当は「文字」≠「ことば」なのです。

 

どんなに良い人でもどんなに悪い人でも、ほとんどの場合、文字を「ことば」として使っていますよね。

 

そうやって考えると、

「あんがい人類は全員マジメかも!」

と思えてきました。

 

お付き合いいただき、ありがとうございました。

 

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Celestial Globe
Maker:James Wilson
Date:1821
Geography:Made in Albany, New York, United States
Culture:American
Medium:Wood, plaster, paper, brass
Dimensions:H. 17 15/16 in. (45.6 cm); Diam. 17 1/2 in. (44.5 cm)
Classification:Furniture

James Wilson | Celestial Globe | American | The Met

 

 

 

 

 

 

 

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 上杉謙信の手書き文字から作った

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