もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

文字と絵(映像)のどちらが分かりやすいか ~乾選手のシュート・ゴルゴ13・プーチン大統領の表情から考えてみた~

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 【目次】

 

 

(冒頭の作品)

Ko-omote Mask for a Noh Drama
Period:Edo period (1615–1868)
Date:18th century
Culture:Japan
Medium:Painted cypress wood
Dimensions:W. 5 1/2 in. (14 cm); L. 8 1/2 in. (21.6 cm)
Classification:Masks

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/45501?sortBy=Relevance&ft=demention&offset=0&rpp=20&pos=2

 

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もじのすけです。

 

今日は、「文字と絵(映像)のどちらが分かりやすいか」という話をしたいと思います。

 

今から、いくつかのことがらを挙げていきますので、「文字と絵(映像)のどちらが分かりやすいか」を考えてみてください。

 

 

1 ロシアW杯サッカー「日本対ベルギー」乾選手のシュートの軌道

 

ロシアW杯本戦トーナメント1回戦「日本対ベルギー」での乾貴士選手のシュート。

 

文字と絵のどちらが分かりやすいでしょうか。

考えてみてください。

 

 

まず、文字の場合を考えてみましょう。

www.soccer-king.jp

 スペインメディア『マルカ』は試合後、日本代表の2得点目となるMF乾貴士の無回転シュートを絶賛した。

 2018 FIFAワールドカップ ロシア・決勝トーナメント1回戦が7月2日に行われ、日本代表はベルギー代表に2-3で敗れた。1-0でリードして迎えた52分、ペナルティエリア手前でボールを受けた乾は右足を振り抜き一閃。世界最高レベルのゴールキーパーで、ベルギー代表の守護神でもあるティボー・クルトワでも止められない見事な無回転シュートをゴールに突き刺していた。

 同メディアは乾のゴールに関して次のように絶賛している。

「日本代表とベルギー代表のスコアを2-0にした乾貴士のシュートは、神秘的なゴールを思い出させた。そう、キャプテン翼の“大空翼”のようだった」

「ベルギー代表のGKティボー・クルトワも漫画のような伸びのあるジャンプをしたにも関わらず、セーブはできず、ボールはゴールに突き刺さった」

この説明文を読むと、どうでしょうか。

乾選手がペナルティエリア手前から、右足で見事な無回転シュートを決めたことは、伝わってきますよね。ですが、どのような軌道を描いたシュートだったのかはわかりません。

 

それでは、絵(映像)だとどうでしょうか。

動画を見てみましょう。

 

youtu.be

 

ブログ上では直接は見ることができないと思いますが、YouTubeで見てください。

この動画の20秒~ のところです。

https://youtu.be/PXlhVz4TsI0?t=46s 

 

この動画を見れば、乾選手がどのような軌道のシュートを放ったかがよく分かりますね。

 

このように乾選手の無回転シュートの軌道は、文字よりも動画の方がよく伝わってきます。

 

なぜ、シュートの軌道は、文字より絵(映像)の方が分かりやすいのか。

それは「シュートの軌道という情報の性質」に理由があります。

 

シュートの軌道は、目に見える情報です。目に見える情報は、絵(映像)の方が情報量が多く、伝わりやすいです。情報の受け手である私たちからすれば、文字で説明を受けるよりも、目で見たままを受け止めた方が情報量が圧倒的に多くなるのです。

 

「一目瞭然」「百聞は一見にしかず」という言葉があるのは、このような状態を意味しているのでしょう。

 

 

2 乾選手のシュートのすごさ

 

乾選手のシュートの軌道は、文字よりも絵(映像)の方が分かりやすいとしても、シュートのすごさはどうでしょうか。

 

動画で見ると乾選手のシュートの軌道の鋭さは伝わってきます。ですが、はたして「そのシュートがどれほどすごいものとして評価されるべきものなのか。」

 

この点は、文字を読んだ方が分かりやすいでしょう。

 

先ほどの文字の記事から引用してみましょう。

乾の無回転シュートは「大空翼のようだった」スペインメディアが絶賛 | サッカーキング

世界最高レベルのゴールキーパーで、ベルギー代表の守護神でもあるティボー・クルトワでも止められない見事な無回転シュートをゴールに突き刺していた。

(中略)

 「ベルギー代表のGKティボー・クルトワも漫画のような伸びのあるジャンプをしたにも関わらず、セーブはできず、ボールはゴールに突き刺さった」 

 

どうでしょうか。

動画を見れば、ゴールキーパーが結構伸びてジャンプしていることは分かりますよね。

ですが、この文字情報を読めば、ベルギーのゴールキーパーであったティボー・クルトワが、並の選手ではなく、世界最高レベルの選手であったことが分かります。

そのクルトワ選手が伸びのあるジャンプをしてもセーブできなかったところに、乾選手のシュートのすごさが表れています。どれほど評価を受けるべきものなのかは、世界最高レベルのゴールキーパーがセーブできなかったという、文字の説明からよく伝わってくるでしょう。

 

乾選手のシュートに関する話なのに、なぜ、今回の「すごさ」は、絵(映像)より文字の説明の方が分かりやすいのか。

 

これは、「乾選手のシュートの軌道」という目に見える「事実」ではなく、「乾選手の放ったシュートのすごさ」という目に見えない「評価」が説明の対象になっているからでしょう。

 

 

このような話は、別の記事でも取り扱いました。

mojinosuke.hatenablog.com

 

私が感じたのは、「オリンピック選手のプレー動作が機能的で美しかったとしても、文字の説明がないと意味を十分に理解できない」という事実でした。

 

他の例としてフィギュアスケートのジャンプ。いったい何回転しているのかわかりますか。回転数をちゃんと見極めている人は少ないのではないでしょうか。「クルクルクルッとたくさん回っているな。何回転しているのだろう。半回転加わってもよくわからんなあ。」という感想を持っている人がけっこう多いと思います。 

 

客観的な「シュートの軌道」や「シュートの動作」という目に見える「事実」は、絵(映像)の方が分かりやすい。ですが、「シュートのすごさ」「プレー動作の意味」という目に見えない「評価」は、文字の方が分かりやすいです。

 

 

 

3 ゴルゴ13の考え

 

それでは「ゴルゴ13の考え」はどうでしょうか。次のゴルゴ13の1コマを見て、彼が何を考えているのかを当ててください。

 

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「ゴルゴ13」187巻 極北航路 P200より

 

どうでしょうか。

分かった方はいますか。

ちなみに私は分かりません。

 

 

もう少しヒントを増やした1コマを見てみましょう。

吹き出しが入っていますよ。

ゴルゴ13が何を考えているか分かりますか。

 

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「ゴルゴ13」187巻 極北航路  P112より 

 

どうでしょうか。 

私はさっぱりわかりません(笑)。

 

初期のゴルゴ13では、わりと心理描写がありました。ですが、どんどん無くなっていきました。今では、前のコマのように吹き出しが無いか、後のコマのように吹き出しがあっても「・・・・」がほとんどです。

今度読まれる機会があったら見てください。「・・・・」バージョンがいかに多いかがよく分かりますよ!

 

「ゴルゴ13の心理が分からないのは、前後の流れが分からないからだ!」という方がいるかもしれません。ですが、ちなみに前後のコマを増やしてみても、分かりません(ページの紹介は省略します)。

 

要するに、何かを「考え」ていること自体は事実だとしても、目に見えないので絵では分からないということです。喜怒哀楽ぐらいは分かるとしても、考えは分かりません。

 

これに対し、ゴルゴ13が何を考えているかをムリヤリ文字で説明すれば、それは明らかに「ゴルゴ13の考え」が私たちにも分かったことになります。

たとえば、「そういう思いをもって私と対決したが、死んでしまったのか。」など。

 

結局、「人の考え」のような「目に見えない事実」は、絵(映像)より文字の方が分かりやすい、ということになるでしょう。

 

 

4 プーチン大統領の表情(ネタ)

 

先ほどは喜怒哀楽くらいは分かると言いましたが、これはどうでしょう。

これはネタですが、真ん中の段のロシアのプーチン大統領の表情を読み取ってください。

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海外反応! I LOVE JAPAN : プーチンとオバマを画像で比較してみた。 海外の反応。より

 

どうですかw 

プーチンの感情(喜怒哀楽)は読み取れましたかw

 

ちなみに、上はオバマ前大統領(アメリカ合衆国)、下はサルコジ元大統領(フランス)です。ついでに考えてみてください。

 

どうでしょうか。私にはプーチン大統領(ロシア)の喜怒哀楽の区別がつきません。ですが、服装が同じなので、明らかにこれはネタでしょう。

オバマ前大統領は区別がつき、サルコジ元大統領は区別がつくときとつかないときがありそうです。

 

「人の考え」は目に見えない事実ですが、「人の感情(喜怒哀楽)」は表情に表れたり(目に見えたり)、表れなかったり(目に見えなかったり)する事実のようです。

 

喜怒哀楽が表情に表れる人は、文字よりも絵(映像)で説明しやすそうです。

喜怒哀楽が表情に出ない人は、絵(映像)よりも文字の方が説明しやすそうです。

 

つまり、人の感情(喜怒哀楽)は目に見える情報かどうかが人によって違うので、文字と絵(映像)のどちらが分かりやすいかは、「時と場合による」みたいですね。

 

 

 

5 とりあえずのまとめ

 

分かりやすさについて一応のまとめをしてみましょう。

①「乾選手のシュートの軌道」のように目に見える事実は、絵(映像)が分かりやすい

②「乾選手のシュートの意味、すごさ」という評価は、文字が分かりやすい

③「ゴルゴ13の考え」のように「人の考え」という目に見えない事実は、文字が分かりやすい

④「プーチンの感情」は、目に見えない事実で、文字が分かりやすい。「オバマの感情」は、目に見える事実で、絵(映像)が分かりやすい。「人の感情」は目に見えるかどうかで違うので、人による。

 

ここまできてちゃぶ台をひっくり返すようなことを言いますが、実は③「人の考え」は必ずしも文字が分かりやすいとは言い切れません。

 

検討が必要な例を挙げ、皆さんをモヤモヤさせて、今回はここまでとしましょう。いずれ検討しましょう。

「人の考え」は、文字の方が分かりやすいか、絵の方が分かりやすいか。検討が必要な例は、こちらです。ナニワ金融道の一コマを扱ったこの記事です。

mojinosuke.hatenablog.com

 

(ここから引用)

 

(社長)

「マルチを潰すの3ヵ月後ぐらいにしてもろたらうれしいんやけど」

(OB)

「それなんのこっちゃ?」

(OB)

「分かってるやろそんな約束できんことくらい」

(社長)

「ええ分かってまっせ」

 

次にマンガのこの場面を引用します。

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ナニワ金融道」(青木雄二著 講談社 1996年) 16巻 第219話「太陽になるんや,灰原!」より 

 

(引用終わり。) 

 

 

 

どうでしょうか。

社長とOBの間で合意ができたのかどうか。社長とOBの「考え」はそれぞれどうだったのか。

文字とマンガでは、印象が違うと感じる人がいると思います。

文字と絵のどっちが分かりやすいのでしょうね。いずれ検討しましょう。

 

おつかれさまでした。

 

 

(さらにモヤモヤさせるオマケ)

実は、この記事の最初の能面と下の能面は同じ能面です。

なぜか角度で違う印象になります。そのように作っているのでしょうけど、不思議だと思いませんか。この表情は、文字の方が分かりやすいでしょうか。絵(映像)の方がわかりやすいでしょうか。

f:id:mojinosuke:20180712185219j:plain (最初の能面)

 

f:id:mojinosuke:20180712185451j:plain

Ko-omote Mask for a Noh Drama
Period:Edo period (1615–1868)
Date:18th century
Culture:Japan
Medium:Painted cypress wood
Dimensions:W. 5 1/2 in. (14 cm); L. 8 1/2 in. (21.6 cm)
Classification:Masks

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/45501?sortBy=Relevance&ft=demention&offset=0&rpp=20&pos=2

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