【目次】
(冒頭の作品)
Robert Macaire: Well, well, it seems he's allowed to return! Maybe I should apply for my old position as manager., from 'News of the day,' published in Le Charivari, October 19, 1871
Series/Portfolio:'News of the day' (Actualités)
Artist:Honoré Daumier (French, Marseilles 1808–1879 Valmondois)
Date:October 19, 1871
Medium:Lithograph on newsprint; second state of two (Delteil)
Dimensions:Image: 9 3/16 × 7 7/16 in. (23.4 × 18.9 cm)
Sheet: 11 5/8 × 11 3/4 in. (29.5 × 29.9 cm)
Classification:Prints
もじのすけです。
今日は「切り抜き文字の怪文書は、何が気持ち悪いのか?」について考えてみたいと思います。
1 夏休みの自由研究
今は、小学校の夏休みの最後の週です。
娘(小4)も息子(小1)も夏休みの宿題の追い込みに入っています。
小学生の夏休みの宿題と言えば「自由研究」。
みなさんは小学生のときの自由研究を覚えていますか?
私は自動販売機を段ボールで作ろうとしたことがあります。本を読まずに作ろうとしていたので、失敗しました。
頭から湯気が出るほど考え、「投入口に硬貨を入れ、その硬貨を内部で分類して、おつりを算定して排出するシステム」を考えようとしました。硬貨の分類まではできても、おつりを算定することが不可能でした。私が作ろうとした自動販売機は単なる「金を吸い込む商品箱」になってしまいました。世の中の自動販売機の中には電子機器が組み込まれていると知ったのは数年後でした。
私の失敗はさておき、娘の場合は、テーマは理科系と社会科系から1つずつ、2つの研究をするように言われています。
娘の社会科系のテーマは「鼠小僧次郎吉の一生」です。
「鼠小僧は義賊といわれているが、本当なのか?」というマニアックなテーマの研究をしていたようです。
それが本日完成しました。
写真はこちら。
・・・すみません、非公開です。
気になりますよね。
でも著作権者である娘の承諾をもらっておりません。
娘が学校から持って帰ったときに承諾をもらって、この記事をリライトする形でみなさんにお見せしたいと思います。
【2018年8月29日追記】
娘の承諾をもらえましたので公開します。
読みにくい方向けに分割します。
前半
後半
赤字の部分より左は事実経過ではなく考察になるようです。
赤字はコラムのようです。
鼠小僧が36歳までに盗んだ総額(推定)は、
金3121両2分9貫26文、銀4匁、銭700文だそうです。
おすしが234万0750貫食べられるそうです。
食べてみたい。
個人的には、鼠小僧が幕末期の人だったという点が意外でした。
「鼠小僧 → 時代劇 → 1600年代か1700年代」
と勝手に思い込んでいました。
必殺シリーズは幕末期のときもありますから。
年表を見る限り、鼠小僧は、天保の大飢饉が始まった1833年の前年である1832年に捕縛されています。そうすると、鼠小僧は大飢饉とは関係がない。
鼠小僧の義賊化は歌舞伎の演目になった影響があるとも言われているようですが、飢饉の後、歌舞伎の演目になる前から噂があったのかもしれません。
「鼠小僧刑死 → 天保の大飢饉 → 庶民のお上への不満 → 鼠小僧の義賊伝説化が発展」
という流れは想像がつきます。
鼠小僧が処刑されたときには評判になったようですから、
「社会情勢が不安定 → 天保の改革 → 庶民のお上への不満 → 鼠小僧の義賊伝説化 → 鼠小僧刑死 → 天保の大飢饉 → 庶民のお上へのますますの不満 → 鼠小僧の義賊伝説化の発展」
なのかもしれませんね。
賭博で金が足りなくなり、盗みに手を出し、盗んだ金は賭博(本当は女性にも)使い、となると教育上あまり伝えたくない用語の連発になっています。
はたして「義賊伝説はうそだ」の結論だけで許されるか。担任の先生の感想が聞きたいところです
(以上追記終わり)
2 自由研究の文字は決まっているのか
調べ物系の自由研究の発表と言えば、手書き文字で作りますよね。
もし、みなさんが小学生のときに活字で提出したら、先生から書き直しを指示されていたのではないでしょうか。
つまり、調べ物系の自由研究の発表は手書き文字でのみ許され、活字(フォント)では許されない。
これはどうしてでしょうか。
先生の立場になって想像してみましょう。生徒に文字を手書きさせることで、あえて手間をかけさせ、じっくりと考えるようにしむける。手書きだとレイアウトの自由度が高いので、重要性や表現のメリハリも考えさせる。
先生のねらいはこんなところではないでしょうか。
「手間をかけさせて、じっくりと考えるようにしむける。」
「レイアウトの自由度が高いので、重要性や表現のメリハリも考えさせる。」
だから手書き文字はOK。活字(フォント)はダメ。
ふむ。それならばですよ。
「切り抜き文字」はどうでしょうか。
1文字1文字切り抜いてのりで貼っています。手間をかけて、じっくりと考えていますよね。レイアウトも文字の置き場所は自由ですし、文字の種類で重要性や表現のメリハリも考えられますね。
どうでしょうか。
・・・多分ダメなのでしょうね。
それを説明するうまい理由は思いつきません。
「自由研究は手書き文字でやるものだ!」「手書き文字ではないから」「切り抜き文字は活字だから」「ダメなものはダメ」。それくらいしか浮かびません。でも、これらは結論であって理由ではないですよね。
3 切り抜き文字の文章
そう考えると「切り抜き文字」が不当な扱いを受けているように思えてきました。
「切り抜き文字」がかわいそう。
そこで、自由研究ではありませんが、私なりに切り抜き文字の文章を作ってみました。
主に新聞から切り抜きました。
「こんにちは もじのすけです きもいかも!」
自分で作っておきながら言うのもなんですが、キモい(気持ち悪い)です。
せっかく小学生の自由研究の話をしたのに、その「さわやかさ」が台無しです。
4 切り抜き文字の怪文書の例
さて、気持ち悪がってばかりいるのもよくないので、考えを進めていきましょう。
切り抜き文字の文書は「怪文書」と言われがちです。
いったい何が気持ち悪いのでしょうか。
切り抜き文字に関する例を挙げてみますので、考えていきましょう。
4-1 怪文書ジェネレータ
(お遊び用ですので注意)
「怪文書ジェネレータ」では、文字を打ち込んだら、切り抜き風の文字に変化して怪文書ができあがります。
たとえばこんな感じです。せっかくなので同じ文章を打ち込んでみます。
どうでしょうか。
キモいでしょうか?
私はキモい(気持ち悪い)と感じませんでした。
4-2 怪文書メーカー
次に「怪文書メーカー」を見てみましょう。
説明と使用例はこちら。
どうでしょうか。
気持ち悪さを感じますか?
私は感じないです。
4-3 もじのすけの切り抜き文字の文章
もじのすけの切り抜き文字の文章を再び載せます。
横並びはきれいめですが、どこか気持ち悪さを感じさせます。
怪文書ジェネレータ → 気持ち悪くない
怪文書メーカー → 気持ち悪くない
もじのすけの文書 → 気持ち悪い
この違いは一体どこからくるのでしょうか。
5 切り抜き文字の怪文書は何が気持ち悪いのか
5-1 もじのすけの文章が気持ち悪い理由
まず、もじのすけの文章の気持ち悪さはどこからくるのでしょうか。
見た目と雰囲気から考えてみましょう。
(1)見た目
活字はきれいなものであるはずなのに、①1文字1文字がふぞろい ②1文字1文字で見るとフォントが違うので人格の統一が無いのに、文章としては統一となっている
(2)雰囲気
③手間ひまをかけて作っている印象がある ④普通の人は文章を作るときに文字を切り抜いて貼るというような手の込んだ行動はとらないのに、今回はとっている
こんなところでしょうか。
5-2 他の2例が気持ち悪くない理由
それでは、怪文書ジェネレータと怪文書メーカーには、なぜ気持ち悪さがないのでしょうか。
(1)見た目
見た目がつるっとしていてきれい。材質のデコボコ感がない。
(2)雰囲気
1つのソフトで作っている感じがあり、統一感がある。手間ひまをかけて作っている印象が無い。
こんな理由が浮かんできます。
逆に言えば、
「見た目がつるっとしていてきれい」
「材質のデコボコ感がない」
「統一感がある」
という点をひっくり返し
「見た目がごつごつしている」
「材質のデコボコ感がある。」
「統一感がない」
となると、気持ち悪くなると思われます。
5-3 特異な例 秀英にじみ明朝
ところが、「見た目のごつごつ感」「材質のデコボコ感」があっても「統一感はあるので」気持ち悪くならない、という不思議な活字(フォント)があります。
それは、DNP(大日本印刷)が開発した秀英体というフォントの種類の1つです。
「秀英にじみ明朝」といいます。
「秀英体」で活版印刷の風合いを再現した「にじみフォント」を開発 | DNP 大日本印刷株式会社
(上記サイトのページより)
【「秀英にじみ明朝L」の特徴】
●“文字のにじみ”を分析し専用プログラムで書体を開発印刷時の圧力(印圧)によってにじむインクの風合いを再現するため、活版印刷物の印影を分析しました。活版で印刷された文字は、インクが活字に付着していくことで、徐々に“ハライ”の先端や“ウロコ”の角が丸くなったり太くなったりする傾向があります。また、線がランダムに揺らいだり太くなったり、交差する部分が丸くなったり、近接する部分がつながったりすることもありました。これらの分析結果を「にじみ効果」として付与する専用プログラムを開発し、秀英体フォントデータにこのプログラムで画像処理を行い、「秀英にじみ明朝L」フォントを作成しました。
●アナログ感やレトロ感を強める「にじみ」の段階を調整
プログラムの設定によって、「にじみ」の“太らせ量”や“ゆらぎ量”などの強弱を段階的にシミュレーションし、書籍の本文やポスターの見出しといった利用シーンで、程良い「にじみ」に調整しました。
また、スマートフォンやタブレット端末などのデジタル機器に表示した際も、従来より太く柔らかい印象を与え、ちらつきを抑えることで眼にやさしく読みやすいフォントに仕上げました。
これらの「にじみ明朝」の画期的なところは、「画面上の文字があたかも紙の上に書かれているかのように映る」という点にあります。
つまり、『文字(書体)の形』を変化させることで「紙」という『媒体』を表現しているのです。
この考え方を応用すれば、
「ザラザラとした土器の上に刻まれた文字」(ザラザラ文字・刻み文字)
「ツルツルの陶器の上に描かれた文字」(ツルツル文字)
「角度によって立体的に浮かび上がる文字」(ホログラフィ文字)
「かすれた文字」(かすれ文字)
「媒体にめり込んだ文字」(めりこみ文字)
このように媒体の質感に応じた活字(フォント)を文字(書体)の形だけで表現することも可能だと思われます。
一旦打ち出された文字フォントを加工して質感を表現するのであれば、アドビフォトショップに加工方法はあるようです。ですが、フォント自体で表現する方法はないようです。
もじのすけの文章の切り抜き文字の文章は、見た目も雰囲気もよくないです。
ですが、怪文書ジェネレータ・怪文書メーカーをさらに発展させて、
「1文字1文字、紙を貼り付けたような触感を視覚的に感じさせるフォント(切り抜き文字フォント)」
も作ることは可能でしょう。
そのときに、文字の統一感を持たせることができれば「気持ち悪くない」と思ってもらえるのかもしれませんね。
6 切り抜き文字から分かること
もじのすけの切り抜き文字の文章の気持ち悪さは、
(1)見た目
活字はきれいなものであるはずなのに、①1文字1文字がふぞろい
②1文字1文字で見るとフォントが違うので人格の統一が無いのに、文章としては統一となっている
(2)雰囲気
③手間ひまをかけて作っている印象がある
④普通の人は文章を作るときに文字を切り抜いて貼るというような手の込んだ行動はとらないのに、今回はとっている
というあたりに問題がありました。
切り抜き文字の気持ち悪さをつきつめて考えていくと、逆に、文字を書くときに大事なことは
・1文字1文字のきれいさ
・文字の配置のバランス(中心線・書字方向など)
・1文字1文字の大きさのバランス・統一感
なのだと分かってきます。
このことを子どもに一言で伝えようとすると
「自由研究の発表の文字を
もっと丁寧に書いて!」
となってしまいます。
そして、嫌がられるのでしょうね。
今回はこのへんにしておきましょう。
おつかれさまでした。
Seated Man Reading a Newspaper (from Sketchbook)
Artist:Francis William Edmonds (American, Hudson, New York 1806–1863 Bronxville, New York)
Date:ca. 1838 and after
Culture:American
Medium:Graphite on off-white wove paper
Dimensions:8 x 6 5/8 in. (20.3 x 16.8 cm)
Classification:Drawings
上杉謙信の手書き文字から作った
「けんしんフォント」無償公開中
【ダウンロードはこちら】
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http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000
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