もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

文字と絵の境目(10) 勝海舟の花押はあの超有名人の花押に似ていた

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【目次】

 

(冒頭の作品)

Scarab Inscribed with Hieroglyphs
Period:Middle Kingdom
Dynasty:late Dynasty 12–13
Date:ca. 1850–1640 B.C.
Geography:From Egypt, Memphite Region, Lisht North, Cemetery, debris, MMA excavations
Medium:Glazed steatite
Dimensions:L. 1.8 × W. 1.2 ×H. 0.7 cm (11/16 × 1/2 × 1/4 in.)

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/557125?searchField=All&sortBy=relevance&ft=sign&offset=0&rpp=80&pos=32

 

1 はじめに

 

 

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もじのすけです。

 

今日は、

勝海舟の花押について

お話ししたいと思います。

 

 

2 勝海舟の人となり

 

勝海舟とはどんな人でしょうか。

幕末は日本の歴史の中でも人気の時代です。

勝海舟は、その時代で避けては通れない

重要な人物です。

 

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男前ですね。

 

勝海舟

人物像についての解説はたくさんあるので、

詳しくはそちらに譲りましょう。

この記事ではちょっとだけ解説します。

勝海舟 - Wikipedia 

 

勝海舟と言えば、明治維新のときに

新政府軍の西郷隆盛と会談して

江戸城無血開城を実現させた人物

として有名です。

これにより

「江戸150万人の民の命が救われた」

と言われています。

 

その後の会津での惨状や

逆に西南戦争での薩摩の惨状を考えると

決してオーバーな表現ではなさそうです。

 

 

 

ちなみに勝海舟の評価はこんな感じです。

西郷隆盛

「勝氏へ初めて面会し候ところ実に驚き入り候人物にて、どれだけ知略これあるやら知れぬ塩梅に見受け申し候、英雄肌で、佐久間象山よりもより一層、有能であり、ひどく惚れ申し候」

坂本龍馬

「今にては日ノ本第一の人物勝麟太郎という人に弟子になり・・・」

栗本鋤雲

「羞恥心を知らない者」

小栗忠順

「勝は有害な人間である。我は彼を除かんと欲す」

福澤諭吉

「やせ我慢をせぬもの」

三浦梧楼

勝海舟、機智の人であったろうが、俺は好かぬ人であった」

Wikipediaより)

 

評価は賛否両論ですね。

 

豪傑系の人には好かれ、

真面目系の人には嫌われていたようです。

 

みなさんは勝海舟

どんなイメージをもっていますか。

 

私がもっている勝海舟のイメージは、

自伝的談話集「氷川清話」の中の

彼の談話を見て作られました。

 

「氷川清話」はこの本です。

https://www.amazon.co.jp/%E6%B0%B7%E5%B7%9D%E6%B8%85%E8%A9%B1-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E5%AD%A6%E8%A1%93%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%8B%9D-%E6%B5%B7%E8%88%9F/dp/406159463X/ref=pd_lpo_sbs_14_t_0?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=BK6FEB3EX2GDFD971521

 

この本は結構面白いですよ。

勝海舟が同時代人をほめたりけなしたり。

 

意外な人も出てきます。

二宮尊徳二宮金次郎)や

幸田露伴についても

勝海舟がコメントしています。

 

勝海舟

コメントしているうちに興に乗って

ときどき漢詩を作っているのですが、

正直あんまり上手くないです。

 

私の勝海舟の印象は、

「頭が良くてキザな江戸のおっさん」

です。

 

キザで自分の頭の良さを

ひけらかす感じが鼻につく。

でも正直で本音をズバズバ言うので、

憎めない。

 

こんな感じです。

 

現代の有名人の誰に似ているかというと、

永六輔さんです。

(永さんファンの方、すみません)

 

お顔はこちら。

永六輔 - Google 検索

 

 

 

3 勝海舟の花押

 

勝海舟の人物紹介だけで

かなり回り道をしました。

 

魅力的な人物なので仕方がありません。

 

 

それでは、気を取り直して、

勝海舟の花押を見てみましょう。

 

こちらです。

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書の日本史〈第9巻〉古文書入門,花押・印章総覧,総索引

平凡社 初版 昭和51年)P203

 

 

これは、何と書いてあるのでしょうか。

これだけでわかる人はすごいです。

おそらく「麟」です。

 

もじのすけは「すごい」のでしょうか。

 

今頃気づきましたか。そのとおりです。

 

・・・といいたいところですが、

種明かしをしましょう。

 

よく似ている花押を思い出しただけです。

単なる記憶だのみです。

 

それでは

勝海舟の花押とよく似た花押。

その花押はいったい誰の花押でしょうか。

歴史上の超有名人です。

 

「麟」の花押と言えば・・・。

勘の良い方はもう気づいたかも?

 

 

4 あの人の花押

 

勝海舟の花押によく似た花押

それはこちらです。

 

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書の日本史〈第9巻〉古文書入門,花押・印章総覧,総索引

平凡社 初版 昭和51年)P246

 

見比べてみましょう。

よく似た人の花押 と 勝海舟の花押

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似てますでしょう。

 

さあ、この超有名人。誰でしょうか。

勝海舟よりもはるかに有名です。

 

その人とは・・・

 

織田信長 でした。

 

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紙本著色織田信長像(狩野元秀画、長興寺蔵)

 

 

5 なぜ似ているのか

 

織田信長勝海舟

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なぜ花押が似ているのでしょうか。

 

 

織田信長の花押「麟」

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織田信長の花押は、

麒麟(きりん)の「麟」の草書体

だと言われています。

麒麟は世の中が治まったときに

表れる空想上の動物だそうです。

 

織田信長は「天下布武」の印と同じく

「麟」の花押でも

天下泰平を願ったのでしょうか。

ネット上ではそう言われていますよね。

 

 

次に勝海舟の花押「麟」

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勝海舟の花押もよく似ているので

おそらく「麟」でしょう。

勝海舟の幼名・通名は「勝麟太郎」です。

さきほど引用した

坂本龍馬の言葉を思い出してみてください。

坂本龍馬

「今にては日ノ本第一の人物勝麟太郎という人に弟子になり・・・」 

 

勝海舟は自分の名前から

「麟」の一文字を取り出したのでしょう。

(もじのすけ説)

 

 

 

6 名前でない花押の意味

 

それでは織田信長

なぜ自分の名前でもない「麟」の字を

花押に使ったのでしょうか。

 

ネット上では、あちこちで

織田信長の花押は

麒麟の「麟」の草書体だと

言われています。

 

麟 花押 - Google 検索

 

歴史ファンの人も

織田信長の花押は「麟」の字だと

当然のように思っていることでしょう。

 

 

でもそれは

本当なのでしょうか。

 

私は織田信長の花押を見ても

「麟」とは分かりません。

本当に

織田信長の花押は「麟」なのでしょうか。

 

 

 

今回の記事で私は、

実体験からこのように考えました。

 

①「書の日本史」の本で

 勝海舟の花押を見た

    ↓

勝海舟の花押が織田信長の花押と

 似ていると思った

    ↓

織田信長の花押が「麟」だから

 ①の勝海舟の花押も「麟」だ

    ↓

勝海舟は「勝麟太郎」だから

 多分花押は「麟」で合っている。

    ↓

「よし!これは間違いない!」

 

と思いました。

自然な流れですよね。 

 

ところが!

ところがですよ!

 

この私の思考の流れは

間違っている

のです。

 

私が

①「書の日本史」の本で

 勝海舟の花押を見た、のは確かです。

そして

織田信長の花押と勝海舟の花押は

確かに似ています。

それでは、

一体どこが間違っているのか?

 

次回の記事では

偉大なる先人の業績をたどり、

織田信長勝海舟の2人の花押について

何が正しくて何が間違っているのかを

探求していきたいと思います。

 

 

おつかれさまでした。

 

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(冒頭の作品)

Arrowhead (Yanonē) Maker:Signed on the tang of the blade by Seijiro (Japanese,18th century)

Date:16th–19th century

Culture:Japanese Medium:Steel

Dimensions:L. 10 3/4 in. (27.3 cm); L. of head 3 1/8 in. (7.8 cm); W. 1 5/16 in. (3.4 cm); Wt. 2.05 oz. (59 g)

Classification:Archery Equipment-Arrowheads

 

 

 

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 上杉謙信の手書き文字から作った

 「けんしんフォント」無償公開中

  【ダウンロードはこちら】

        ↓
 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000

 

  

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