もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

文字の化体性 ~文字が表す情報の存在感~

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 【目次】

 

 

(冒頭の作品)

Canopic Jar Inscribed for King Nesibanebdjedet (Smendes)
Period:Third Intermediate Period
Dynasty:Dynasty 21
Reign:reign of Smendes
Date:ca. 1070–1044 B.C.
Geography:From Egypt; Possibly from Eastern Delta, Tanis (San el-Hagar)
Medium:Travertine (Egyptian alabaster)
Dimensions:H. 29 cm (11 7/16 in.); Diam. 21.8 cm (8 9/16 in.); Depth 24.4 cm (9 5/8 in.); Circ. 68.2 cm (26 7/8 in.); Diam. of mouth: 12 cm (4 3/4 in.); Diam. of base 14 cm (5 1/2 in.)

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/553732

 

 

 

 

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もじのすけです。

 

体調を整えるために定期更新が1日遅れてしまいました!すみません!

前回までの記事で書いていた織田信長麒麟の「麟」の花押についての検証は準備中です。

 

今回は「文字の化体性」についてお話ししたいと思います。

 

「目に前に存在しないものでも、文字にして見える化すると、意味を込めたり、加工できる」というお話です。 

 

「???」となりやすいかもしれません。

「文字の化体性」は抽象的なお話になりやすいので、具体例を示しましょう。

 

 

1 具体例1 孫悟空

 

こんな具体例を考えてみましょう。

 

【具体例1】

孫悟空」と書いた単語カードを手にとって空中で動かす。

 

皆さんは、このような動作をしたとき、どんなイメージを持ちますか。

 

おそらく、「西遊記」か「ドラゴンボール」の主人公である孫悟空斗雲に乗って空を飛び回るイメージではないでしょうか。

 

このとき、「孫悟空」と書かれた単語カードは、「孫悟空」(+斗雲?)になっていることでしょう。

 

 

2 具体例2 富士山

 

次にこんな具体例はどうでしょうか。

 

【具体例2】

富士山と書いた単語カードをどんどん上に上げる。

 

皆さんはこの動作を目にしたらどのように感じますか。

 

おそらく単語カードが富士山を表し、富士山がぐんぐん成長し今よりも高くなるイメージを持つのではないでしょうか。

 

 

3 具体例3 1万円札

 

さらにこんな具体例を考えてみましょう。

 

【具体例3】

1万円札を100枚重ねて束になったものを知り合いからもらう。

 

これはどうでしょうか。

1万円札は、大きめのカードくらいの紙に文字や絵がたくさん描かれています。

 

みなさんが1万円札100枚を受け取るとき、「紙切れ100枚を受け取った」と感じる人はほぼいないでしょう。

「こんな字や柄がいっぱい書いた紙を渡しやがって、書き込めるスペースもないし、荷物が重くなるじゃないか!」と怒り出す人は、もちろんいないですよね。もしそんな人がいたら、素晴らしく素直な視点の持ち主ですが、世の中は生きていきにくいことでしょう。

 

当たり前のことですが、1万円札より大きい単位のお札はないので、具体例3の100枚の1万円札を、50万円+50万円に分けることも、1万円+99万円に分けることもできます。

 

この例をもとに色んなバリエーションを考えてみましょう。

 

皆さんが、1万円札と同じ大きさの、何も書かれていない白い紙100枚をもらったときにはどう感じるでしょうか。

 

・・・何もうれしくないと思います。

 

白い紙100枚だと、「お買い物ごっこ」などの「ごっこあそび」はできるかもしれません。子どもならそうやって遊べるかもしれません。ですが、こどもたちは白い紙1枚をみてこれが「1万円」だと覚えておかなければなりません。

 

子どもだと、「ごっこ遊び」をしているうちに、その白い紙を1万円札に限定せず、「5000円札」「1000円札」だと勝手に置き換え始める可能性があります。

 

これに対して、手書きでもいいので「10000」「¥10000」「1万円」と書いてあると、他のお札に置き換えることはないでしょう。

 

その意味で1万円の価値を表す文字を紙の上に書いておくと、「1万円札」又は「1万円札モドキ」という一定の意味を持つことになります。

 

 

4 具体例4 その他

 

その他にも具体例をたくさん挙げることができます。

 

【具体例4】 神様

神様と書いた単語カードをはさみでジョキジョキ切る

 

【具体例5】 人の名札

人の名前を書いた札に五寸釘を打ち込む

 

【具体例6】 2位の表彰状

2位の表彰状をビリビリに破る

 

【具体例7】 聖書・コーラン

聖書・コーランを火にくべる

 

皆さんはこれらのことを、心を痛めずに、気にせずに、実行できますか。

私はとてもできません。

 

「そもそもそんなことをする必要が無いよ!」という人もいることでしょう。

それでは必要があったらやれますか?

私は必要があっても無くてもできません。

やれる、という人も何らかの心理的な負担を感じることと思います。

 

その気持ちはどこからくるのでしょうか。

 

 

5 文字の化体性

 

延々と具体例を並べました。

言いたいことは何かと言いますと、 

目に見えるものも、目に見えない物事も

文字になると「見える化」できる、

ということです。

 

孫悟空=そんごくう

富士山=ふじさん

1万円=いちまんえん

神様=かみさま

というように、文字となったときには

その文字の発音が「見える化」します(表音)。

 

それだけではありません。

 

その単語カードやお札大の紙は、まるで、孫悟空、富士山、1万円札、神様そのもののように想像できることでしょう(表意・表語)。

 

このとき、孫悟空、富士山、1万円札、神様は紙に出現している(=「化体」している)ことでしょう。

 

これを「文字の化体性」と呼びたいと思います。

 

ちなみに

「富士山」は存在しますが、その大きさは紙の大きさに収まるものではありません。

孫悟空」は「西遊記」という空想上のキャラクターで本来見えないはずのもの。またはマンガの「ドラゴンボール」の主人公という現実には存在しない人物。

「神様」も本来見えないもの。

「1万円の価値」も目には見えない。

 

このように本来目に見えなかったり表しきれないものも、文字にすれば、物の上に「化体」し、表すことができる。

 

これはとても不思議なことだと思います。

 

 

6 文字の化体性を使った工夫

 

先ほどの4では

【具体例4】 神様

 神様と書いた単語カードをはさみでジョキジョキ切る

【具体例5】 人の名札

 人の名前を書いた札に五寸釘を打ち込む

【具体例6】 2位の表彰状

 2位の表彰状をビリビリに破る

【具体例7】 聖書・コーラン

 聖書・コーランを火にくべる

という例を並べました。

 

このように文字に化体すると、化体された物を加工することができます。

上の例は明らかに悪い加工例でしょう。

 

文字として化体することは便利だと思います。

たとえば、チェスの駒は種類を1つ1つ形で表しています。これに対して将棋の駒は文字で表しています。どちらがカンタンに作れるかはすぐ分かることでしょう。

 

私は、子供たちと将棋の駒の字を紙に書いて切りとって、駒を作って遊んだことがあります。中学生の時はノートの紙に盤面と駒の字を書いては消しゴムで消して、将棋として遊んだこともあります。

 

このように、文字で何かを化体すると化体された物を使って加工することができます。

先ほどは悪い加工例を挙げました。そんな加工例をわざわざ実行したいという人はいないでしょう。

 

後の記事では、「文字の化体性」を使ったよい加工例、つまり文字に化体したものをみなさんの生活に役立てるよい加工例をご紹介したいと思います。 

 

おつかれさまでした。

 

 

7 おまけ

 

実は、「富士山」「神様」の存在感の話は、過去の記事でも少しご紹介していました。

お時間のある方はこちらもどうぞ。

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

 

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Spinet
Date:1540
Geography:Venice, Italy
Culture:Italian
Medium:Wood, parchment, ivory, paint
Dimensions:Width: 57 1/4 in. (145.4 cm)
Depth: 19 in. (48.3 cm)
Classification:Chordophone-Zither-plucked-virginal

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/503043

 

 

 

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