もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

文字と絵の境目(4) (戦国武将の花押)

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【目次】

 

 

こんにちは。もじのすけです。

 

前回の記事では、

花押について少しお話ししましたが、

今回は、

「花押クイズ」で

遊んでみましょう。

 

遊びながら、

文字と絵の境目について

考えてみたいと思います。

 

これまでハンコで遊んだ記事は、

この3つです。

 

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

 

今回はハンコではなく、

花押の画像を見て、

誰の花押か?

どんな字が隠れているのか?

それとも、そもそも字が無いのか?

を当てて下さいね。

 

 

1 現代でも使われている「花押」

 

クイズに入る前に、

「そもそも「花押」って何だ?」

と思われた方がいると思いますので、

定義を引用しておきます。

 

色々な定義がありますが、

コトバンクの中の

デジタル大辞泉の定義が

一番しっくりきます。

kotobank.jp

デジタル大辞泉の解説か‐おう
〔クワアフ〕【花押/華押】
文書の末尾などに書く署名の一種。初め、自署のかわりとして発生したものが、平安末期より実名の下に書かれるようになり、のちには印章のように彫って押すものも現れた。その形態により、草名(実名の草書体をさらに図案化したもの)、二合体(実名の旁(つくり)などを組み合わせたもの)、一字体(実名の一字、または特定の文字を図案化したもの)、別用体(文字と関係のない動物などの形を図案化したもの)、明朝体(中国の明代に流行した様式で、天地2本の線を引いたもの)などに分かれる。また、まったく単純な略記号からなるものを略押(りゃくおう)という。花字(かじ)。押字(おうじ)。→書き判
出典|小学館
デジタル大辞泉について | 情報 凡例 

 

花押というと

もはや使われていないイメージですが、

現代でも使っている人はいます。

 

それは誰かと言いますと、

歴代の内閣総理大臣です。

 

首相官邸のHPには

歴代の総理大臣の写真と花押がセットになって

示されています。

 

平成以降の総理大臣のものはこちら

http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/heisei.html

 

例として、

現在の内閣総理大臣である

安倍首相の花押を見てみましょう。

 

安倍首相(第90代)

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http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/90.html

 

安倍首相(第96代)

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http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/96.html

 

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花押の違いに気づかれましたか?

第96代の花押は

第90代のときより

複雑になっていますね。

そこに何らかの意味はあるはずです。

 

線や点が増えていることや

最後の線が上にはねていることには、

どんな意味が込められているのでしょうか。

 

紆余曲折を示しているのでしょうか。

 

知っておられる方がいれば、

教えて下さい。

 

推測ですが、

安倍首相(第96代)の花押と

岸信介佐藤栄作の花押は似ています。

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http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/96.html

 

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岸元首相

http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/56.html

佐藤元首相

http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/souri/61.html

 

岸信介は安倍首相の祖父。

佐藤栄作はその岸信介の弟、

つまり安倍首相にとっては

おじいさんの弟。

 

ひょっとしたら、安倍首相は

この二人の元首相の花押を

合わせた上でアレンジしたのかも。

 

 

ちょっと話が脱線してしまいました。

 

花押は遠い昔の話のものではなく、

現代でもまだ使われているよ、

ということが言いたかったのでした。 

 

 

 

2 花押クイズの遊び方

 

それでは、

「花押クイズ」の遊び方を

ご説明します。

1 花押を集める。

2 その花押のマークを見つめる。

3 誰の花押かどうか、

  文字が隠れているか、を当てる。

4 答えを見て、喜んだり、悔しがる。

以上終わり。

簡単です。

 

 

3 戦国武将の花押クイズ

 

これは絵?文字?という観点で

戦国武将の花押について、

一緒に考えていただきたいと思います。

 

花押の画像の出典は、

書の日本史〈第9巻〉古文書入門,花押・印章総覧,総索引

平凡社 初版 昭和51年)

P210~P251   

です。

 

文字と絵の境目の検討ではありますが、

あまり考えすぎずに、

見つめて遊んでみてください。

 

誰の花押か、何が書いてあるか、

当ててくださいね。

 

 

 

 3-1 第1問 

最初の花押はこれです。

 

さあ、何と書いてあって、

誰の花押でしょうか。

 

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読めますか。

 

このブログのクイズには、

ほとんどの場合に出てくる武将ですね。

前回の記事にも出てきました。

 

 

正解は、

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伊達政宗 の花押でした。

政宗と書いてあります。

 

伊達政宗の花押はセキレイ型と

言われているようですね。

セキレイは鳥の種類です。

セキレイの形の中に、

政宗」の字が融合している

といってよいでしょう。

ただ、この花押が

セキレイ型といえるかは怪しいです。

 

 

伊達政宗の他の花押を見てみましょう。

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おそらくこれが文句なしに

セキレイ型と言えそうです。 

 

伊達政宗は、

豊臣秀吉の意に反する一揆を扇動した

との疑いを

豊臣秀吉から受けたことが

あるようですね。

 

豊臣秀吉伊達政宗

セキレイ型の花押入りの一揆勢への書状を

証拠として突きつけたとか。

 

その時に、伊達政宗

「普段からセキレイの花押の目の部分に

 針の穴を開けていたけれども

 その書状には穴が無いので偽物だ。」

と弁解し、切り抜けたようですね。

厳密には苦しい弁解ですので、

豊臣秀吉が許してあげたというのが

実態なのでしょうね。

 

伊達政宗の穴の空いた花押の書状が、

何通あるのか、

それらは、いつの日付になっていて、

誰宛てのもので、

誰が保管していたかを調べてみると

面白いかもしれません。

 

伊達政宗は、

豊臣秀吉に疑惑を持たれたころから、

家臣宛ての書状を作って、

せっせと穴を開けて

家臣に渡していたかもしれませんね。

 

あるいは

もっと前から周到に準備して

普段から出しているいくつもの書状に

開けていたかもしれませんね。

 

あるいは

穴を開けたものを作らず

口先だけで乗り切った

かもしれませんね。

 

伊達政宗の花押はたくさんあります。

針の穴が開いた書状はあるのか。

どの花押のどの部分が目になるのか。

伊達政宗が弁解のために

どこまで準備したのか。

これらは、気になるところです。

機会があれば

もうすこし調べて見たいと思います。

 

 

(2020年1月26日加筆)

調査した記事を書きました。こちらです。

mojinosuke.hatenablog.com

(以上加筆終わり) 

  

ということで、

伊達政宗の今回の花押は、

政宗」の字が絵的なデザインに

組み込まれている感じでしたね。 

 

 

 3-2 第2問

それでは、次の問題。

 

何と書いてあって、

誰の花押でしょうか。

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よく見ると

上に、名前が書いてありますよ。

 

メジャーな戦国武将ではありません。

ですが、歴史マンガが好きな人は

すぐにわかるかもしれませんね。

 

ヒントはこのマンガです。

https://twitter.com/sengoku_YM?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor

 

 

ヒントは

豊臣秀吉の最古参の家臣で、

どんどん出世した武将ですが、

九州征伐の時に

大失敗をやらかして失脚。

しかし、

小田原征伐の時以後の働きで

再び勢いを取り戻した、という

波瀾万丈の人物です。

 

 

正解は、

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仙石秀久 でした。

 

 

よく見てください。

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花押にはちゃんと

「秀久」と書いてあります。

 

仙石秀久 - Wikipedia

仙石 秀久(せんごく ひでひさ)は、戦国時代から江戸時代前期にかけての武将大名信濃小諸藩の初代藩主。出石藩仙石家初代。

豊臣秀吉の最古参の家臣で少年の頃より仕え[3]、家臣団では最も早く大名に出世した。戸次川の戦いで大敗し改易されるが、小田原征伐の活躍により許された。

 (Wikipediaより)

 

この花押も、

伊達政宗の花押と同じく

「秀久」という名前の文字と

その他の部分が一体化して

全体として花押のデザインと

なっています。

 

 

仙石秀久を描いたマンガはこちら。

http://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000010640

 

他にも、

センゴク天正記」「センゴク一統記」

センゴク権兵衛」などの作品があります。

 

仙石秀久の花押は、

まだ名前の文字が読めますよね。

 

 

 3-3 第3問

次は2つ出します。

これは

何と書いてあって、

誰の花押でしょうか。

左と右は別の人です。

親子です。

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ヒント

前回の記事

親子とも出てきています。

 

親は圧倒的に有利な立場から

まさかの敗死をしてしまいました。

 

NHK大河ドラマ

「おんな城主直虎」では、

セリフらしきものを

一言しゃべったかどうか、

はっきりしないままの死でした。

 

子は、蹴鞠が得意なようです。

 

 

 

正解は、

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左 今川義元

右 今川氏真 でした。

 

 

 

花押をもう一度示します。

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 今川義元  今川氏真   

 

花押の文字は、

名前と関係の無い

「義」のようです。

「義」の字を崩したものでしょう。

今川義元の名前の「義」の一字

とも思えますが、それは違います。

 

今川義元より前から

今川家で代々「義」の字を

使っていましたので。

 

もっと言えば、

鎌倉・室町時代

武家の花押のベースは、

「義」の字でしたので。

 

この点の

武家の花押のメインの系譜は

次回以後に説明します。

 

2人の花押を再掲します。

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 今川義元   今川氏真 

 

偏見かもしれませんが

右の今川氏真の花押は

左の今川義元に比べて

弱々しいですね。

 

花押は

ある程度本人の性格を

表しているように思います。

 

ともあれ、

名前とは違いますが、

今川義元・氏真親子の花押は、

「義」という文字が

けっこうハッキリと残っています。

 

 

 3-4 第4問

それでは

これはどうでしょうか。

何と書いてあって、

誰の花押でしょうか。

 

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前の記事を見た方は、

覚えていませんか?

 

軍神とまでいわれた有名な武将です。

もじのすけが推している戦国武将です。

 

 

 

 

 

 

正解は、

 

 

 

 

 

 

上杉謙信(輝虎)

でした。

 

この花押に文字が

隠れているかどうかは

わかりません。

謙信の「信」にも見えますが、

多分違うでしょう。

上杉謙信と名乗る前から、

似たような花押を使っていますので。

http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/03/16/224000#3おまけ花押と花押印

 

上杉謙信の花押は、

一字か二字をデザイン(図案化)した

のかもしれませんし、

単なる絵かもしれません。

わかったら追記します。

 

見ていて素朴に思うのですが、

ここまで来ると、

文字というより

もはや単なる絵といってよいでしょう。 

 

言い換えると

花押は、

元々は署名から進化したものですが、

ここまで来ると

署名というより、

絵になったといってよいでしょう。

 

もしこの花押が

文字が図案化されたものだ

というのであれば、

かろうじて文字が溶け残っている

という感じでしょうか。

 

 

 3-5 第5問 

それでは、これはどうでしょうか?

 

何と書いてあって、

誰の花押でしょうか。

 

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何の文字が書いてあるのか

私にはわかりません。

お手上げです。

読めた人は教えてください。

 

ヒントは

さっきの武将の後継者を支えた人です。

さっきの武将の後継者は、

昨年のNHK大河ドラマ真田丸では

優柔不断な性格の人として描かれ、

最終回まで出演していましたね。

その人を支えたのがこの花押の人です。

 

この人は、関ヶ原の戦いの前に

有名な書状を書いたことが

知られていますね。

有能なことで知られ、

後継者の家の存続のために、

尽力しました。

この人がいなかったら

お家はとりつぶしになっていたかも

しれませんね。

 

 

正解は、

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直江兼続でした。

 

有名な書状は、

直江状」でした。

直江状 - Wikipedia

徳川家康をコケにした書状

と言われていますね。

その内容については諸説あるようです。

直江状(なおえじょう)は、慶長5年(1600年)に上杉景勝家老直江兼続が、徳川家康の命を受けて上杉家との交渉に当たっていた西笑承兌に送った書簡。関ヶ原の戦いのきっかけとなる会津征伐を家康に決意させたとされるが、偽文書ではないが後世に大幅に改竄されたとする説がある。

 

この花押に

文字が入っているのかどうかは

わかりません。 

虫みたいに見えます。

 

 

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この花押を見つめていると

「直」の字を

横に倒したようにも見えますが、

多分違うと思います。

 

次の蜂須賀家政の花押を見てください。

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これも虫みたいに見えます。

この花押と一緒に見ていると

先ほどの直江兼続の花押が

「直」の文字とは関係が無いように

思えるのです。

 

今のところ、直江兼続の花押は

単に虫か動物を

表しているのではないか

と思っています。

 

ちなみに

蜂須賀家は、

ちょっと変わった花押です。

 

蜂須賀家政の父親である

蜂須賀正勝(小六)の花押を

見てください。

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左は狸みたい、右はふぐみたい。

 

 

違うとしてもかなり絵的な花押です。

 

果たしてこれらの花押に

文字があるのかどうか。

あったとしても私には読めません。

絵になってしまっています。

 

これを見ても

直江兼続の花押は単なる虫ではないか、

と思ってしまいます。

 

絵の要素が強くなり、

文字がほぼ消えてしまっています。

 

 

 

 

4 おまけ

 

この話の最終形として

かなりマニアックな武将と

それほど有名ではない武将ですが、

真木島昭光と三好政康の花押を

見てください。

 

 

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 (上記文書P74より)

 

これは鳥でしょう。

どうみても絵でしょう。

文字じゃないでしょう。

 

 

署名から進化した花押は、

戦国時代には、

名前の文字を離れ、

そしてだんだん絵的になっていく

という流れがあったようです。

 

ただし、

この時代より後の時代の

基準となった花押には

やはり文字が残っています。

 

その基準の花押は

徳川家康の花押 です。 

 

武家の花押には、

その時代その時代で

後の流れをリードする

基準となる花押があります。

そしてその基準となる花押も

ちゃんと流れがあります。

 

この点については、

次回以後にお話ししましょう。

 

それでは今日はここまで。

おつかれさまでした。

 

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