【目次】
(冒頭の作品)
Moveable rotating calendar mounted on elaborate wave-base with rabbit crest
Artist:Kubo Shunman (Japanese, 1757–1820)
Period:Edo period (1615–1868)
Date:1795, year of the rabbit
Culture:Japan
Medium:Polychrome woodblock print (surimono); ink and color on paper
Dimensions:Image: 5 3/8 x 11 in. (13.7 x 27.9 cm)
もじのすけです。
今回は、手書き文字の発展について4つ目の提言をしたいと思います。
1 手書き文字の衰退
以前の記事では、電子媒体上の活字の隆盛と手書き文字の衰退について
説明しました。その記事はこちらです。
文字と媒体の関係(1)と(3)中間まとめ ~手書き文字の衰退~ - もじのすけ の文字ブログ
その記事の中で、こんなことを書きました。
明治期に、日本人は
手書き文字から活字へと関心を移した。
その後は
活字の媒体の変化へと関心を移し、
手書き文字を次第に忘れつつある。
つまり
「手書き文字の衰退」
が起きています。
つまり、現在の状況は紙媒体上の活字すら衰退気味。まして手書き文字は・・・、という状態です。これまでこの文字ブログを読んでこられた方にはおなじみですが、図にするとこんな感じになります。
2 手書き文字の発展に向けた提言
以前の記事の引用を続けます。
手書き文字には良さがたくさんある。
だからこそ、
私は手書き文字の衰退を
食い止めたい、
何とか残したいと思っています。
というか、
衰退の現状を逆手にとって
手書き文字を
むしろ発展させたい
と思っています。
そこで、手書き文字の復権・発展のための提言をしてきました。
今回はその提言の第4弾です。
今回の提言は
「有名人の筆跡カレンダーを作れ」
です。
3 「偉人の生涯と筆跡カレンダー」
唐突ですが、私の部屋にあるカレンダーをご覧下さい。
手書き文字で書かれているカレンダー。
このカレンダーの曜日と数字に手書き文字。この特徴的な手書き文字は、フランスの有名画家、ピエール=オーギュスト・ルノワールの手書き文字から作られています。(ちなみに絵もルノワールの作品です。)
20台の欄を見てください。
この列の10の位の「2」は全て同じです。ルノワールがどこかで書いた「2」を10の位の「2」として使い回しているのでしょう。
この中の「22」を見てください。10の位の「2」と1の位の「2」が違っています。2種類の「2」を使い分けているのでしょう。
今度は、2日、12日、22日を見比べてみましょう。
1の位の2は全て同じです。1の位の「2」も統一されているようです。10の位の「2」で1種類。1の位の「2」でもう1種類。この2つの種類の「2」を使い回しているのだろうと思いました。
この2種類の「2」が1つに表れているのが、先ほどの22日です。
ところがですよ、20台をもう少し見てみると・・・。
なんだこの「29」の「2」は!
見たことがない3種類目の「2」です。
「29」の「9」の方も確認してみましょう。「9」を見てみるとどれも同じです。
それでは、なんで29日だけが違う3種類目の「2」なのか。
「29」はルノワールが書いた本当の元の字なのではないか。
つまり、この「29」から「9」を取り出し使い回し、この3種類目の「2」はこのときだけに使う。そして、「2」は10の位と1の位でさらに別の2種類の「2」を使い回しているのではないか。そんな風に想像しています。
1種類目と2種類目の「2」
3種類目の「2」
この調子で読み込んでいくと「1」から「9」まで、パズルのように組み合わせが見えてくるかもしれませんね。
・・・すみません。実は脱線してしまいました。私は、カレンダーの数の作り方を話したかったのではありません。
この画像で私が言いたかったのは、実はこっちです。
「ルノワールの手書き文字で作られたカレンダーは、活字とは違ってやさしい手書きの文字で書かれていて、私の部屋全体を落ち着かせています。」
脱線しすぎましたね。部屋が落ち着きすぎ、ルノワールの手書き文字に親しみすぎて、思わずパズルのように遊んでしまいました。
この偉人の手書き文字を使ったカレンダーを出版しているのは、出版社ではありません。なんと住宅メーカーのミサワホームです。
今回のカレンダーは2018年版です。
今回のカレンダーの画家ルノワールの説明はこちらです。
ミサワホームの「偉人の生涯と筆跡カレンダー」は、1988年から続く名物カレンダーで、レオナルド・ダ・ビンチ、 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ、宮沢 賢治、松尾 芭蕉など、歴史上の人物の手書き文字が使われています。
販売促進用のグッズとして作成されているようですが、現在、その意義は単なる販売促進にとどまっていません。大きな賞を毎年もらっているようですが、2018年版も「文部科学大臣賞」を受賞したようです。
ニュースリリース|ミサワホーム2018年版「偉人の生涯と筆跡カレンダー」第69回全国カレンダー展「文部科学大臣賞」を受賞
ミサワホームは、かねてより「住まいは、巣まい」をテーマに家づくりに取り組んできました。カレンダーについても、過去の偉人たちの功績を紹介するとともに、その紙面をきっかけに子どもの情操教育や親子のコミュニケーションが育まれることを願い制作しています。
1988年から続く「偉人の筆跡」シリーズは、世界や日本の過去の偉人たちが、手紙や日記などに残したサインや数字などを収集しデザイン化したカレンダーです。2018年版で31回目となります。
31年も続けているなんて素敵な企画ですね。ちなみに誤解されないように言っておきますが、私は、ミサワホームの家に住んでいるわけではありませんよ。ミサワホームの家とは無関係の私でも、筆跡カレンダーの手書き文字に癒やされて、自分の部屋によい雰囲気をもらっています。本当にほっこりするんですよ。
4 有名人の筆跡カレンダーを作れ
4-1 有名人は筆跡カレンダーを作れる
ミサワホームの「偉人の生涯と筆跡カレンダー」。このような素敵な企画ならば、ミサワホームで採用した偉人の手書き文字に限る必要は全く無いと思います。
考えてみれば、現代の有名人はサインを書くのですから、自分の手書き文字でカレンダーを作ったっていいですよね。
アイドル、スポーツ選手、歌手、俳優、小説家、マンガ家、文化人、マンガやアニメのキャラクター。有名人が所属する事務所が進めればすぐに商品化できるのではないでしょうか。事務所に所属していない有名人は、今すぐにでも筆跡カレンダーを作れますね。
例えば、イチローの手書き文字で書かれた「筆跡カレンダー」。ファンにしてみれば、サインもいいですが、カレンダーの手書き文字の方が何度も目にして、元気が出ると思いませんか。
達筆な有名人のカレンダーは販売に向いています。例えば、松岡修造の日めくりカレンダー3部作。「まいにち、修造!」「ほめくり、修造!」「まいにち、テニス!」。
好きな人にとっては、松岡修造の熱(苦し)い写真とともに、毎日元気がもらえることでしょう。
この日めくりカレンダーですが、残念ながら、文字や数字が活字になっています。もじのすけとしては、松岡修造は達筆(少なくとも勢いのある手書き文字)なので、言葉も数字も手書きだったらもっといいのになあ、と思います。
少し視点を変えて、有名人の立場になって考えてみましょうか。達筆でない有名人は「自分は字が汚いから」とカレンダー作りをためらうかもしれません。でも大丈夫。
書くのは数字ですから。
いやだったら曜日は書かなくてもいいですから。
数字くらいなら、丁寧に書けばよく、上手下手は目立ちません。
「1」から「31」までを書いて、それも面倒くさいなら「0」から「9」までを書いて、あとは事務所とプロにカレンダーに仕上げてもらえばよいではないですか。
有名人の誰か、作らないかなあ。
思いつきですが、数字でなくてもよいのかも。たとえば北斗の拳のケンシロウ。
「アタ」=1 「アタタ」=2 「アタタタ」=3
「アタ アタ」=11 「アタタタ アタ」=31
29になると頭が変になりそうですね(笑)。
「アタ」を「拳」の絵にしてもよいのかもしれませんね。そうなるともう「手書き文字の発展」とは関係なくなりますが・・・。
4-2 誰でも筆跡カレンダーを作れる
最後に、私のようなファンの立場に立って考えてみましょう。
筆跡カレンダーは、本人以外の人でも作れます。読者のみなさんも、誰でも、作ろうと思えばいつでも作れます。
自分の好きな有名人の数字を集めて、手書き文字カレンダーを作ればよいだけです。
今の芸能人でもいいですし、日本の有名人に限る必要もなく、海外の有名人でもいいです。歴史クラスタなら昔の戦国武将でもOKです。昔の書状の複製(コピー)画像から日付の数字だけを取り出して、作ればいいのです。原本も傷まないし、おススメです。
(´-`).。oO(本当は、ファンではなくて全国の美術館・博物館が、自分のところの所蔵品の作者の筆跡カレンダーを作ってグッズにしてくれたらいいなあ。)
また、手作りであれば、筆跡カレンダーの種類も工夫できます。手帳にカレンダーの紙を貼り付けるのもいいでしょう。手帳内で好きな有名人の筆跡カレンダーを作ってしまうのも面白いです。
ここで気になるのが著作権やパブリシティ権。心配な人もいることでしょう。
ですが、やり方に気をつけさえすれば大丈夫ですよ。
手書きの数字自体が「書家の書」のようによっぽど芸術的な作品といえるような場合でない限り、そもそも有名人が書いた数字について、有名人にも誰にも著作権は発生しません。万が一著作権が発生しても、みなさんが筆跡カレンダーを商品化するのではなく自分で作って個人で楽しむ分には、著作権侵害は起きませんし、パブリシティ権などという難しい問題も生じません。
ちなみにパブリシティ権はその全貌が見えず、新しくて難しい権利ですが調べたい方はどうぞ。
ということで、誰でも有名人の筆跡カレンダーを作れます。
もじのすけも自分用にけんしんカレンダー を作ってみようかな。
バラエティ豊かな有名人の筆跡カレンダーで、みなさんが元気になったり、生活が豊かになったらいいなあ、と思います。
5 提言はまだまだつづく
今回は手書き文字の発展の提言第4弾として、「有名人の筆跡カレンダーを作れ」と題し、素材の数字さえあれば誰でもカンタンに作れることをお話ししました。
今までの文字の関係図と、これまでの提言やアイデアを取り込んだ文字の関係図は以下のようになります。
【今まで】
【これから】
今回の記事までの、手書き文字の発展の話の流れを示しておきます。記事のつながりの参考のために、リンクを貼り付けておきます。記事の題名を順番に見ていくだけでも、話の流れが見えてくるかもしれませんね。
7 文字と媒体の関係(1)と(3)中間まとめ ~手書き文字の衰退~
10 手書き文字の発展〔提言2〕将棋ソフトの駒の字は棋士が書け
12 電子書籍(電子媒体)と本(紙媒体)の違い(2) 紙媒体の文字の引用
13 電子書籍(電子媒体)と本(紙媒体)の違い(3) 新聞に書き込みしてみた①
14 電子書籍(電子媒体)と本(紙媒体)の違い(4) 新聞に書き込みしてみた②
16 手書き文字の発展〔提言3つづき〕落書き本(書き込み本)を作るメリット
17 手書き文字の発展〔提言4〕有名人の筆跡カレンダーを作れ ~ミサワホームの「偉人の生涯と筆跡カレンダー」の検討~(今回)
手書き文字を発展させるための提言はまだまだ続きます。でもそれが次回なのかは、もじのすけの気分しだい!
それでは、長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。
Calendar
Designer:Designed by Louis Comfort Tiffany (American, New York 1848–1933 New York)
Maker:Tiffany Studios (1902–32)
Date:ca. 1910
Geography:Made in New York, New York, United States
Culture:American
Medium:Bronze
Designed by Louis Comfort Tiffany | Calendar | American | The Met
上杉謙信の手書き文字から作った
「けんしんフォント」無償公開中
【ダウンロードはこちら】
↓
http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000
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