【目次】
(冒頭の作品)
Sword Guard (Tsuba)
Date:18th century
Culture:Japanese
Medium:Copper, copper-gold alloy (shakudō)
Dimensions:Diam. 2 13/16 in. (7.1 cm); thickness 3/16 in. (0.5 cm); Wt. 4.3 oz. (121.9 g)
Sword Guard (Tsuba) | Japanese | The Met
もじのすけです。
今日は「文字の消失性」についてお話ししようと思います。
その前にまずは近況から。
この数週間続いていた仕事の多忙な状態は、だんだん出口が見えてきました。
もじのすけは今週初めに各種マスコミで報道された話題(森友問題でも確定申告でもありません。)にどっぷり関わっていまして、その準備もひと段落し、ようやく気持ちに余裕が出てきました。
こんな多忙な時期だからこそ、「文字」「文字ブログ」というもう一つの世界が、どんなに自分の心を救っているか、豊かにしているか、を実感しています。ありがたいかぎりです。
この時期をなんとか乗り切って、はやく他のブロガーさんのブログ巡回を復活し、自分のブログには時間をかけて、みなさんに読みやすい記事をご提供したいと思います。
今回もエッセイ風ですが、文字のことについてお話ししたいと思います。
(近況はここまで)
1 新幹線の車内のニュース
今回のお話は、近況の話と関係しています。
今週初めに各種マスコミで報道された話題の仕事が、午後になってようやく終わり、同僚と2人で帰路につき、新幹線で移動していました。2人とも早朝から準備していたからか、つかれも出てきて、おとなしく並んで座っていました。
新幹線の車内では、自動ドアの上に電光掲示板がありますよね。
しばらくすると、その電光掲示板にその日の私たちの仕事のニュースが流れ始めました。
「自分たちの仕事を新幹線の車内ニュースで見るなんて、なんだか不思議な気分ですね。」「そうですねえ。」といった会話をして、しばらく感慨にふけっていました。
「せっかくだから写真に撮っておきましょう。」
同僚はいきなりiPadを掲げ、立ち上がりました。
周りの人も突然のことに驚いた様子で、こちらを見守っています。
iPadでねらいをすまして、パチリ。
ところが、私たちの仕事のニュースは流れてしまっていました。
肝心のパチリのタイミングには、
「渋谷で女子高生ユーチューバーが『フリーおっぱい』と称して通行人に胸を触らせて、書類送検された」
というニュースに。
同僚は恥ずかしそうに座りました。
2 電光掲示板で学んだこと
私たちは、この同僚の経験から何を学ぶことができるでしょうか。
「仕事への誇りと偏見に立ち向かう心」でしょうか。
それも、一応はもちろんありますが
せっかくの文字ブログなので、文字から学びたいと思います。
今回私が学んだのは、
「文字は消失する」ということです。
先ほど私はこのように書きました。
新幹線の車内では、自動ドアの上に電光掲示板がありますよね。
しばらくすると、その日の私たちの仕事のニュースが電光掲示板に流れたのです。
イメージ映像はこちらです。
(Central Japan Vehicle channel東海乗り物チャンネル 2016/12/29 に公開)
文字を基準にすれば、
右から左にニュースの文字が「流れている」といえるでしょう。
そして、左に流れた後の枠外へと文字は「消えて」しまっています。
電光掲示板を基準にして考えると、どうでしょうか。
本当は電球が点滅しているだけで、文字がついては「消えて」います。そしてちょっとずつズレた位置で、ついては「消えて」います。
いずれにしても、電光掲示板では文字は「消えて」いるのです 。
今まで見えていた文字が消えてしまう。
この性質を「文字の消失性」と名づけたいと思います。
3 文字の残存性と消失性
「文字の消失性」。
これは電光掲示板などの電子媒体に表れた文字ならではの性質でしょう。
みなさんは、大事な書類の原稿を書いているときに、バックアップをし忘れて文章が消えてしまい、呆然とした経験はありませんか。
つまり「大量の文字(文章)が消失した」という経験です。
これって、紙の原稿に書いているときには起こらない現象ですよね。
もちろん、紙でも、消しゴム、修正液、修正テープで消せることは消せます。粘土板でも木簡でも刻印をしても、上から何かを加えれば、消すことは消せます。ですが物理的に書かれた文字は、電子媒体上の文字のように簡単には消せないでしょう。
(参考)粘土板の文字の消しにくさを扱った「虚構新聞」のニュース
物理的に書かれたり、刻まれた文字は、風化しない限りずっと残ります(「文字の残存性」)。
私たちが、紙や木簡や粘土板に書かれた文字、壁や道具に刻まれた文字など、遙か昔の資料を見ることができるのは、この「文字の残存性」のおかげです。
残存性をもつ文字については、積極的に「消す」作業をしない限り消えません。
これに対し、電子媒体上の文字は電気を使って表示しているので、よほどのことがない限り、いつかは視界から消えます。
「いつかは消える」という意味では、電子媒体上の文字は「文字の消失性」をもっています。考えてみると、音楽でいうところの「音」も音が出てから、いつかは消えます(「音の消失性」)。
その意味では、電子媒体上の文字は「音」に近いのかもしれません。
かつて「絵」と「文字」の違いをガッツリ検討したことがありました。
(長文注意の記事です)
今後は「音」と「文字」の関係を検討するのも面白そうです。
また、紙などの上に書かれた文字も、工夫しだいで「文字の消失性」を発揮することができます。この点も比べてみると面白そうです。
このあたりのことは、次回以降にお話ししようと思います。ただし次回かどうかは気分次第です。それでは、仕事のつかれがちょっと残っているので本日はこれくらいにしておきます。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
Shield
Date:19th century
Culture:Afghan
Medium:Iron, cotton, leather
Dimensions:Diam. 14 1/2 in. (36.8 cm); D. 3 1/2 in. (8.9 cm); Wt. 1 lb. 15.6 oz. (895.8 g)
Classification:Shields
上杉謙信の手書き文字から作った
「けんしんフォント」無償公開中
【ダウンロードはこちら】
↓
http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000
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