もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

娘の手紙から考えた ~文字の出現性~

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(冒頭の作品)

Illustrated letter to M. Roland
Artist:Marie-Rosalie Bonheur (French, Bordeaux 1822–1899 Melun)
Date:1840–99
Medium:Pen and brown ink on machine-laid paper
Dimensions:8 1/8 x 10 5/8 in. (20.6 x 27.0 cm)
Classification:Drawings

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/343303

 

 

 

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もじのすけです。

 

1 娘の手紙

 

昨年末のある日、仕事を終えて家に帰ると、

玄関にこんな手紙が置いてありました。

娘の手紙です。

 

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どうやら文字ブログで使ってほしいようです。

 

ジッと見つめていると、

「どうですか。」

「使えるところはないですか。」

 と聞いてきます。

 

多忙な時期だったので、

「うーん」と言いながら

そのままになりました。

 

作品1、2、3が一段落ついた後の

正月休みに改めて見返すと

気づいた点がありました。

 

さっそくお話ししたいと思います。 

 

今日のテーマは

「文字の出現性」です。

 

 

 

2 文字の出現のしかた

 

「文字の出現性」とは、

 

それまで文字が無かったところから

ある瞬間に「出現」する

ということです。

 

 

言い換えると、

文字には、必ず

何も無い状態から

出現する瞬間がある。

 

文字が現れる前は文字がない。

文字が現れた後は文字がある。

 

どうでしょうか。

「どれだけ言い換えても

 当たり前すぎる・・・。」

と思いますよね。

 

 

でも、

これが意外に大事な概念だと

思っています。

 

 

 

今まで何もなかったところに、

文字が現れる。

 

そんなとき

文字はどうやって「出現する」のでしょうか。

 

文字の出現性をテーマにした

過去の記事はいくつかあります。

その一部を挙げます。

 

手書き文字と活字の違い(14) ~活字が表す情報③~ - もじのすけ の文字ブログ

文字と音の違い② ~サカナクションのアルクアラウンドのPVから~ - もじのすけ の文字ブログ

 

みなさんは、

文字を出現させるために

どんな方法が思いつきますか?

 

文字を書く。

これが1番典型的ですよね。

 

文字を打つ。

これも思いつきますよね。

私は今まさに

キーボードで文字を打っています。

 

そのほかには?思いつきますか?

 

文字を出現させる第3の方法について

説明した記事はこちらです。

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

第3の方法とはこちらです。

こどもたちが作ってくれました。

 

「お父さんしごとがんばってね」

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これはなんという方法でしょうか。

 

これは

文字を形作る」

だと思います。

 

子供たちに第3の方法を

教えてもらいました。

 

 

 

まだ第4の方法があります。

 

「え、まだあるの?」と

思われたかもしれませんね。

 

本当に、まだありますよ。

さあ何でしょうか。

 

こちらの記事に書いています。

mojinosuke.hatenablog.com

 

読む時間の無い方に

答えをお示しします。

 

答えは

音声入力 です。

 

 

音声入力によって文字を出現させる。

これを何と表現するか。

苦心の末、私はこのように表現しました。

「文字を吹き込む」

 

 

結局、文字の出現のしかたは

次の4つになりそうです。

 

関連キーワードと併せて

並べてみましょう。

 

①文字を「書く」

 ・・・ 手書き

②文字を「打つ」

 ・・・ ワープロワープロソフト

     パソコン、プリンタ

③文字を「形作る」

 ・・・ 木片

④文字を「吹き込む」

 ・・・ 音声入力

 

 

3 消しゴムで消すのは?

 

それでは、娘の手紙に戻りましょう。

娘は文字をどのように

出現させたのでしょうか。

 

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「もじのすけへ

 えん筆とけしゴム

 逆にしてみた!

 (猪?)ボクうり男 お」

 

これはえんぴつで紙を黒くぬりつぶし

それから消しゴムで消して

作ったようです。

 

これは、文字を・・・

 

 

①「書く」でしょうね。

 

「消しゴムで消すことによって

 文字を書いた」といえるでしょう。

消しゴムを動かす腕の動きを考えれば

「書く」で、まちがいないでしょう。

 

 

万が一ですが、

消しゴムで強く消してから、

そこ以外を鉛筆で黒くぬりつぶしたら

どうでしょうか。

 

それは

③文字を「形作る」

でしょう。

 

もともと白紙のところを

消しゴムで消したときに

「文字を書いた」という人はいないでしょう。

文字は出現していないのですから。

 

その後、黒くぬりつぶすときに

文字が出現する。

しかし、文字の線に沿って

腕は動かしていない。

 

そうすると背景から

文字の形を出現させているので、

③文字を「形作る」

といってよいでしょう。

 

 

4 応用編

 

 4-1 人文字

正月休みは時間があったので、

もじのすけの連想が続きます。

それでは人文字はどうでしょうか。

 

http://hs.shijonawate-gakuen.ac.jp/wp-content/uploads/2016/09/IMG_2863-640x426.jpg

創立90周年記念 人文字 | 四條畷学園高等学校

 

ehon.furuhashi-kazuo.com

 

人の身体そのものを集めたり、

人の姿勢で文字を表しています。

 

 

これは・・・

 

③文字を「形作る」

でしょう。

 


 4-2 活字

それでは、

活字はどうでしょうか。

 

今の時代、

キーボードで打っている人が多いでしょう。

画面に映していたり、

プリンターで印字したり。

 

そうすると

活字の全てについて

②文字を「打つ」

といってよいでしょう。

 

そもそも文字を印字するものを

活字というのですから。

 

 

 4-3 活字に似たもの

とはいえ、

「これは打たない活字ではないか」

と迷うものもあります。

 

その1つが、

鉄道文字の「すみ丸ゴシック」です。

中西あきこ氏を取材した

日経新聞の記事をご覧下さい。

 

記事そのものはこちら。

www.nikkei.com

国鉄独自の書体が登場

ちょうど120年前の1898年(明治31年)に逓信省鉄道作業局が「各驛(えき)々名札記載例竝(ならびに)形状寸法ノ件」という通達を出し、読みやすい文字に整えるよう丁寧な指示がなされている。当時は横書きでも文字は右から左に「志んはし(新橋)」などと書かれていた。左から右に書かれるようになったのは戦後すぐの1946年4月の規程から。翌年の通達で平仮名が現代的仮名遣いになる。

そのころも駅名標はまだ手書きだった。鉄道網は全国に張り巡らされており、分かりやすく、かつ統一的な字体で表記するための工夫を重ねている。

駅名標が最も大きく変わったのが、60年の「日本国有鉄道掲示規程」だ。64年の東京五輪東海道新幹線開業を控え、読みやすさに配慮した国鉄オリジナルの書体「すみ丸ゴシック」が登場した。

平仮名で大きく駅名を表示するのが特徴。文字は太さが均一なゴシック体をもとに、角を丸めたので「すみ(隅)丸」と呼んだ。筆やハケで手書きして形を整えやすい書体だった。当時の経緯や実際の作業について聞くために、JRに問い合わせて幹部のお話を聞いたり、製造会社を訪ねたりした。実際にホーローの駅名標づくりを体験させてもらったりもした。 

 

「すみ丸ゴシック」

(正式には「すみ丸角ゴシック体」)

これ自体は書体です。

 

どの書体であっても、

この記事での問題はその書体の文字が

「どのように出現するか」です。

 

「すみ丸ゴシック」は

手書きが予定されていた書体です。

手書きの風情があふれています。

 

【もじをもじる】(id:mojiru)さんが

鉄道文字についての定番本2冊として

・中西あきこ氏の

 「駅の文字、電車の文字」

・石川祐基氏の

 「もじ鉄 書体で読み解く

  日本全国全鉄道の駅名標

を紹介されています。

www.mojiru.com

 

今の鉄道文字は活字として

②「文字を打つ」でしょう。

 

ですが、同じ鉄道文字でも

「すみ丸ゴシック」は

活字ではなく、

①「文字を書く」でしょう。

 

 

ちなみにもう1つ

打たない活字のように見えるものとして

大阪泉州の看板屋さんである

サインズシュウさんの看板文字

があります。

 

サインズシュウさんの文字は

鉄道文字が手書きだった時代を

彷彿とさせます。

すごい技術です。

 

これはどうでしょうか。

 

サインズシュウさんの文字は

活字のような文字ですが、

一定の定まった書体に基づいて

書いておられるわけではない

(と思われます)ので、

これも活字ではなく

手書き文字だと思います。

twitter.com

 

サインズシュウさんの看板文字も

活字ではなく、

①「文字を書く」でしょう。

 

 

娘の手紙から始まった

文字の出現性の連想はまだ続きます。

 

他にも

文字の出現の仕方について

検討してみたいものがありますが、

次回に回しましょう。

 

 

それでは今日はここまでとしましょう。

おつかれさまでした。

 

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The Architecture of Country Houses; including Designs for Cottages, Farm Houses, and Villas
Author:Andrew Jackson Downing (American, Newburgh, New York 1815–1852 Yonkers, New York)
Illustrator:Alexander Jackson Davis (American, New York 1803–1892 West Orange, New Jersey)
Publisher:D. Appleton & Co. (New York, NY)
Publisher: George S. Appleton , Philadelphia
Author:Letters from Andrew Jackson Downing (American, Newburgh, New York 1815–1852 Yonkers, New York)
Artist:Drawings bv Alexander Jackson Davis (American, New York 1803–1892 West Orange, New Jersey)
Published in:Philadelphia; New York
Date:1850
Medium:Illustrations: lithography; letters and drawings inserted
Dimensions:9 1/2 x 6 1/8 x 1 15/16 in. (24.1 x 15.6 x 5 cm)
Classifications:Books, Ornament & Architecture

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/348831

 

 

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 上杉謙信の手書き文字から作った

 「けんしんフォント」無償公開中

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 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000

 

  

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