もじのすけ の文字ブログ

もじのすけ の文字ブログ

文字について考えたことをつづっています

文字と絵の境目(15)~ ( ゚A ゚) は文字か絵か~



 

 

(冒頭の作品)

Inlay / bead blank with face
Period:Ptolemaic Period–Roman Period
Date:100 BC–100 AD
Geography:From Egypt
Medium:Glass
Dimensions:w. 1 × l. 1.2 cm (3/8 × 1/2 in.)

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/558852

 

 

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もじのすけです。 

 

1 誤字の話

 

以前、とある家庭の子どもが

自分の名前の文字を間違えて覚えていた

という 誤字の話 をしました。

 mojinosuke.hatenablog.com

 

その子どもは、「倫」の一部の

「冊」に似た部分の内側が

カタカナの「サ」だと

覚えていたそうです。

 

その子どもの名誉のために

このブログでは

「とある家庭の子ども」と

しておきましょう。

 

ちょっと長いですが引用します。

あるお父さんがいました。

あるお母さんがいました。

その間に小学生の子どもがいました。

 

ある日、

子どもが宿題で書いた文字が

あまりにきたなかったので

お父さんは言いました。

 

「字が汚すぎる。

 きれいに書かなくてもよいから、

 丁寧に書いてほしい。」

 

「お父さんは、お父さんのお母さんから

 『文字のたてよこの線は最後まで

  しっかり書きなさい。』

 『いくつかの平行な線があるなら、

  その線の間は等間隔にしなさい。』

 と教わったよ。」

 

「だから

 臨機応変にくずして書くのもいいけど、

 まずは基本として

 等間隔で線を書きなさい。」

 

「たとえば、

 織田信長の『信』の文字。

 『信』の『言』のよこ線は

 等間隔に書きなさい。」

 

子ども

「なるほど。言いたいことは分かった。」 

 

お父さん

「分かればよろしい。」

「たとえば、あなたの名前の文字の

 『倫』だってそうだよ。

 『倫』の『冊』みたいな部分の

 4つのたて線は等間隔にすべきである。」

 

子ども

「え?4つのたて線?」

 

お父さん

「え?何が『え?』なん?

 4つのたて線の話ですけど。」

 

子ども

「『冊』の部分って、中は

 カタカナの『サ』じゃないの?」

 

お父さん

「え?何の話?『冊』の中は

 カタカナの『サ』だと思ってたの?」

 

子ども

「え?違うの?」

 

お父さん

「マジか。自分の名前の字だぞ?」

 

子ども

「だって幼稚園の年長のときに

 お母さんが

 『そこはカタカナの

  サみたいなものよ』

 と言ってたから・・・。」

 

(ごそごそと電子辞書を取り出し

 「倫」を調べ始めて)

子ども

「・・・マジか・・・。」

 ○| ̄|_ 

 

お父さん

「今までずっと書いてきたのか。

 そうだ!リビングに習字が

 飾ってあったぞ。

 筆ならちゃんと書いたのでは?」

 

お父さんと子どもは

リビングの習字を見つめました。

 

それでは読者のみなさんもごらんください。

 

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拡大して見てみましょう。

 

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さらに拡大!


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お父さんと子ども

「ああ~っ。」

 

お父さん

「たしかに『サ』・・・。」

 

もう『サ』しか目に入らない(笑)

「美しい心」なんてどうでもいい(笑)

 

 

 

お父さん

「今まで何回書いたんだよ。」

「こうなる前に誰か言ってあげてよ。」

「でも・・・気づかないかも(笑)。」

「世間と本人のギャップ、

 なんか笑えるw」

  

 

この「とある家庭」は

親子の会話があってよい家庭ですねw 

 

今回の記事はその続きです。

 

 

2 誤字の犯人はお母さん 

 

この写真をみて下さい。

 

お父さんと子どもが「倫」の字について

語っていると、

お母さんがお風呂から上がってきました。

お父さんが吹き出しながら

お母さんに衝撃の事実を説明しました。

 

子ども

「だって幼稚園の年長のときに

 お母さんが

 『そこはカタカナのサみたいなものよ』

 と言ってたから・・・。」

というくだりでは、

お母さんは、最初は

その発言を否定していました。

 

ですがしばらくすると、

ボソッと小さな声で

「言ったかもしれない」

と言いました。

 

そして、

子どもが紙の真ん中に

「倫」の字を2つ書きました。

 

 

子どもの「倫」

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やはり「サ」ですね。

 

 

そしてお母さんも紙の右の方に3つ

「倫」の字を書きました。

 

ご覧ください。

 

お母さんの「倫」
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どうでしょうか。

やはり「サ」です。

 

 

よく見ると

子どもの「倫」は

「サ」の部分だけ力が抜けています。

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これに対してお母さんの「倫」は、

全体的に力みがなく「サ」が自然です。

お母さんは冊をあえて崩していたのです。

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そうです。

犯人はお母さんだったのでした。

 

 

3 子どもが書いた顔文字

 

そんなこんなでワイワイやっていると

子どもがおもむろに

紙の左側と下に落書きをしはじめました。

 


それがこちらです。

 

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( ゚A ゚)

( ゚B ゚)

( ゚C ゚)

 

( ゚C ゚)

( ゚D ゚)

( ゚E ゚)

( ゚F ゚) 

( ゚G ゚)

( ゚H ゚)

( ゚I ゚)

( ゚L ゚)  

 

これはいったい何でしょうか。

 

これは顔文字でしょう。

顔文字に表情のバリエーションを

つけたものでしょう。

 

 

4 ( ゚A ゚) は「絵」か「文字」か

 

それではこの顔文字 ( ゚A ゚) は

文字でしょうか。それとも絵でしょうか 

 

顔文字一般が文字か絵か、については

かつて検討しました。

mojinosuke.hatenablog.com

この記事は当ブログ最長の記事なので

気力と時間のある方だけごらんください。

 

それはさておき

今回は「顔文字一般」ではなく、

子どもの書いた顔文字について

考えてみましょう。

 

みなさんも考えてみてください。

これは文字ですか?絵ですか?

 

( ゚A ゚)

 

 

ここで文字と絵の違いを

「発音できるかどうか」

としておきましょう。

 

( ゚A ゚) を素直に見れば

「人の顔」であり、

発音できない「絵」でしょう。

 

真ん中には

アルファベットの「A」が入っています。

ですが、この「A」の部分も

( ゚A ゚)の並びからすれば 

口を表す「絵」でしょう。

 

ということで、

( ゚A ゚)全体も「A」も、「絵」

でしょう。

 

それでは、今回の子どものように

顔文字を並べてみたらどうでしょうか。

 

( ゚A ゚)( ゚B ゚)( ゚C ゚)( ゚D ゚)( ゚E ゚)

( ゚F ゚)( ゚G ゚)( ゚H ゚)( ゚I ゚)( ゚L ゚)  

の中の

( ゚A ゚) です。

 

どうでしょうか。

 

 

先ほどと同様

 ( ゚A ゚) は

人の顔を表したものであり

発音できない「絵」でしょう。

 

それでは「A」の部分はというと・・・

( ゚A ゚)( ゚B ゚)( ゚C ゚)( ゚D ゚)( ゚E ゚)

( ゚F ゚)( ゚G ゚)( ゚H ゚)( ゚I ゚)( ゚L ゚)  

の中の

( ゚A ゚) です。

 

「A」の部分は口かもしれませんが、

「B」「C」・・・「L」と並べると

明らかに

「エー、ビー、シー、ディー、イー

 エフ、ジー、エイチ、アイ、エル

 (なぜかジェイ、ケーがない。)。」

の「エー」と発音する部分でしょう。

 

そうすると

この時の「A」は「エー」という文字

でしょう。

 

つまり

( ゚A ゚)( ゚B ゚)( ゚C ゚)( ゚D ゚)( ゚E ゚)

( ゚F ゚)( ゚G ゚)( ゚H ゚)( ゚I ゚)( ゚L ゚)  

の中の ( ゚A ゚) は、

・全体としては人の顔の「絵」

・「A」の部分は

 「エー」と発音できる「文字」

でしょう。

 

 

5 前後の線との並び方しだい

 

今回の子どもの顔文字を見ると

こんなことが分かりました。

 

( ゚A ゚)単独だと

・( ゚A ゚)全体も「A」も、「絵」

 

これに対して

( ゚A ゚)( ゚B ゚)( ゚C ゚)( ゚D ゚)( ゚E ゚)

( ゚F ゚)( ゚G ゚)( ゚H ゚)( ゚I ゚)( ゚L ゚)  

の中の ( ゚A ゚) だと、

・( ゚A ゚)全体としては「絵」

・「A」の部分は「文字」

 

 

どうして同じ( ゚A ゚)なのに

こんな違いが起きるのでしょうか。

 

結局、

( ゚A ゚) の絵の中の「A」が

「文字」なのか

「絵」の一部にすぎないかどうかは

前後の線との並び方しだい

ということでしょう。

 

具体的に言います。

 

( ゚A ゚)のAの前後の並びが

 ( ゚   ゚) なら

「A」は口を表すでしょう。

 

 

( ゚A ゚)のAの前後の並びが

( ゚   ゚)( ゚B ゚)( ゚C ゚)( ゚D ゚)( ゚E ゚)

( ゚F ゚)( ゚G ゚)( ゚H ゚)( ゚I ゚)( ゚L ゚)  なら

「エービーシー・・・」と発音するので

「A」は文字でもあるでしょう。

 

 

つまり、「A」のように

文字のように見える線の集まりが

絵の一部なのか、

文字としても機能するのか、は

前後の線との並び方しだい

で違ってくるでしょう。

 

 

子どもの顔文字を見て

お父さんはそう考えたらしいですよ。

 

 

いつも読んでいただき

ありがとうございます。

 

Glass mosaic face bead
Period:Eraly Imperial
Date:1st century B.C.–1st century A.D.
Culture:Roman, Eastern Mediterranean
Medium:Glass
Dimensions:Diam.: 7/16 in. (1.1 cm)
Classification:Glass

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/254702

 

 

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 上杉謙信の手書き文字から作った

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 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000

 

  

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