【目次】
(冒頭の作品)
Shirt
Date:1450–1550
Geography:Peru
Culture:Chimú
Medium:Camelid fiber, cotton
Dimensions:H. 23 1/2 x . 44 1/2 in. (72.7 cm)
もじのすけです。
今回のテーマは「文字を読む方向」です。
今回は短めの記事です。
文字を読む方向については、『書字方向』というキーワードで、前々回の記事で、ちょっと扱いました。
前々回の記事を読まれた方は、『だこんち』という言葉で、「あ~あの話ね。」と思い出してもらえることでしょう。
今回は、「書字方向」と似ているけれど、ちょっとだけ違った話です。
1 玄関のはり紙
ある晩、例によって私が深夜に仕事から帰宅すると、玄関にこんな張り紙がしてありました。なにやら文字がいっぱい書いてあります。
拡大して見てみましょう。
どうやら娘の字です。「今年の目ひょう」だそうです。
打ち出してみましょう。
今年の目ひょう
おじやはおいしい。
とうふもおいしい。
うしのおにくもおいしい。
さんまもおいしい。
「ん?!」
お、よくかんがえたらぜんぶ
しょくざいだ!!
ごはんがたべたくなってきた。魚・肉
と米・やさいい。
ガラスごしにみえる
ンゴロンゴロやンジャメナのたびに出ようというこうこく
ばんばんせんでんされている。
れきしの本もよみたいな!!
「ヒント 横 よこ」
だそうです。
どこが今年の目標なのかわかりません。
2 解読
そんな私のために、娘はわかりやす過ぎるヒントをくれていました。
「ヒント 横 よこ」
それぞれの行の一文字目を横から読めばよいようです。テレビ欄でよく見る隠しメッセージと同じように読めばよさそうです。
「おとうさんおしごとガンばれ」でした。
3 娘の書きぶり
娘の書きぶりをよく見てみましょう。
「おとうさん」までは快調です。
そのあとは苦労している感が伝わってきます。
「ん?!」
お、よくかんがえたら
そして苦しさの頂点はここです。
ガラスごしにみえる
ンゴロンゴロやンジャメナのたびに出ようというこうこく
「ンジャメナ」を知っている人も多くはないでしょうけど、「ンゴロンゴロ」を知っている人は本当にわずかでしょう。みなさんの中で知っていたという人はおられますか?
ンジャメナとは
ンゴロンゴロとは
一部の世代には有名な「マサイ族」が住んでいるそうです。
「ンゴロンゴロ」は知ってはいたのですが正直忘れていたので、後で調べ直しました。
テレビ欄の隠しメッセージの場合、元になる文章がとぎれずに改行しています。文中のことばを調節すれば行の1文字目の文字を好きな文字にできるわけです。
これに対して娘はなるべく1行1文で区切ろうとしています。娘の書き方のほうが難しいと思います。とくに、文頭の1文字目に「ん」「ン」を持ってくるのは相当難しいです。
これをクリアするのが、「ンゴロンゴロ」なのです。
私や娘がなぜ「ンゴロンゴロ」を知っているかというと、こんな理由からです。
うちの家では、ひまつぶしに「しりとり」をすることがあります。それに飽きたら、今度は「りとりし」をするのです。
「りとりし」は、「しりとり」の反対で、言葉の頭の1文字目をつないで遊ぶのです。
たとえば、ごりらの「ご」 → まいご → まいごの「ま」 → こま → こまの「こ」、とつなげる感じです。
子どもと遊ぶ大人にありがちですが、「しりとり」に飽きてきたら、わざと「ん」がつく言葉を言ったりしますよね?「パン」とか「本」とか「肉まん」とか「うどん」と言ったりして。
めんどくさいときは、最初からアンパンマンのキャラしりとりをするときもあります。アンパンマンのキャラは、「マン」「ちゃん」という終わらせる言葉のオンパレードです。「マン」「ちゃん」から逃れるつもりで「ジャムおじさん」を思いついてもダメで、ほとんどの場合続けることが許されません。このしりとりだと、続けられるのは「めいけんチーズ」くらいじゃないでしょうか。
このような流れで、わが家では「りとりし」に飽きたときに出てくるのが、「ンジャメナ」と「ンゴロンゴロ」なのです。
ともあれ、ンゴロンゴロまで投入し、苦労にあふれた娘のメッセージは、ありがたく頂戴しました。
4 息子のフォロー
翌日は朝も晩も娘に会えず、感想を伝えることができませんでした。そうこうしているうちに、家に帰ると食卓に、息子(弟)の手紙が置いてありました。姉の隠しメッセージを読むようにと促すコメントが書いてありました。
〔おとうさんへ あんごうといてみて〕
縦に書いたものを消して、横に書いたものを残しています。どうやら、息子なりにがんばって隠しメッセージを作ろうとして、うまくいかず断念したようです。
縦に書いた後に、1行ずつしりとりのようにして横書きで書けばよかったのですが、結局最後は「ンジャメナ」か「ンゴロンゴロ」頼みになります。幼稚園の年長さんには難しかったことでしょう。
息子の苦労したメッセージも、気持ち込みでまとめて頂戴しました。
5 学んだこと
娘のメッセージ本文の「書字方向」は縦でした。しかし、隠しメッセージを読む方向、すなわち「文字を読む方向」は横(ただし右から左)でした。
息子のメッセージは、「書字方向」も「文字を読む方向」も横(左から右)でした。
メッセージの内容と気持ちを受け取るとき、言いたいことが伝わるのであれば、書字方向も読む方向も気にしないでいい! というのが今回私が学んだことでした。
もちろん仕事関係の連絡でこのようなことはできないでしょうし、この形式が許されるのは、親子の関係の連絡かどうかなど、時と場合によることでしょう。
ですが「書字方向」「読む方向」を気にし過ぎなくても、伝わるときには伝わる、ということがわかりました。むしろ書字方向と読む方向のズレも、書きぶりの多様性の1つとして味が出るということなのでしょう。
ありきたりの感想なのですが、そんな感想がいつもより腑に落ちた出来事でした。
大ざっぱですが、今日はこのへんにしておきましょう。
ふだん応援してくれているこどもたちがインフルエンザにかかっているので、ご恩返しをせねばなりません。今回のブログはそこそこにさせていただき、失礼します。
それでは、またお会いしましょう!
Comedians' Handbill
Artist:Paul Klee (German (born Switzerland), Münchenbuchsee 1879–1940 Muralto-Locarno)
Date:1938
Medium:Gouache on newsprint mounted on cardboard
Dimensions:21 1/2 × 14 1/4 in. (54.6 × 36.2 cm)
Classification:Drawings
Paul Klee | Comedians' Handbill | The Met
上杉謙信の手書き文字から作った
「けんしんフォント」無償公開中
【ダウンロードはこちら】
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http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000
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