もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

誤字 ~名前の文字をきちんと書けますか~

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(冒頭の作品)

清 鄭燮 遠山煙竹圖 軸
Misty Bamboo on a Distant Mountain
Artist:Zheng Xie (Chinese, 1693–1765)
Period:Qing dynasty (1644–1911)
Date:dated 1753
Culture:China
Medium:Set of four hanging scrolls; ink on paper
Dimensions:Overall with mounting (each): 107 1/4 × 27 in. (272.4 × 68.6 cm)

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/44620

 

 

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もじのすけです。 

 

みなさんはこれまでに

自分の名前を何回書いていますか。

 

数限りなく書いているので

回数なんて分からない、

という人がほとんどでしょう。

 

もちろん私も同じです。

 

みんなが数限りなく書いているはずの

「名前の文字」。

 

この「名前の文字」について

びっくりしたことを

今日はお話ししたいと思います。

 

ご本人の名誉のために、

全ての登場人物を

匿名にしておきましょう。

(ご本人の掲載承諾取得済み)

 

 

1 自分の名前の字

 

あるお父さんがいました。

あるお母さんがいました。

その間に小学生の子どもがいました。

 

ある日、

子どもが宿題で書いた文字が

あまりにきたなかったので

お父さんは言いました。

 

「字が汚すぎる。

 きれいに書かなくてもよいから、

 丁寧に書いてほしい。」

 

「お父さんは、お父さんのお母さんから

 『文字のたてよこの線は最後まで

  しっかり書きなさい。』

 『いくつかの平行な線があるなら、

  その線の間は等間隔にしなさい。』

 と教わったよ。」

 

「だから

 臨機応変にくずして書くのもいいけど、

 まずは基本として

 等間隔で線を書きなさい。」

 

「たとえば、

 織田信長の『信』の文字。

 『信』の『言』のよこ線は

 等間隔に書きなさい。」

 

子ども

「なるほど。言いたいことは分かった。」 

 

お父さん

「分かればよろしい。」

「たとえば、あなたの名前の文字の

 『倫』だってそうだよ。

 『倫』の『冊』みたいな部分の

 4つのたて線は等間隔にすべきである。」

 

子ども

「え?4つのたて線?」

 

お父さん

「え?何が『え?』なん?

 4つのたて線の話ですけど。」

 

子ども

「『冊』の部分って、中は

 カタカナの『サ』じゃないの?」

 

お父さん

「え?何の話?『冊』の中は

 カタカナの『サ』だと思ってたの?」

 

子ども

「え?違うの?」

 

お父さん

「マジか。自分の名前の字だぞ?」

 

子ども

「だって幼稚園の年長のときに

 お母さんが

 『そこはカタカナのサみたいなものよ』

 と言ってたから・・・。」

 

(ごそごそと電子辞書を取り出し

 「倫」を調べ始めて)

子ども

「・・・マジか・・・。」

 ○| ̄|_ 

 

お父さん

「今までずっと書いてきたのか。

 そうだ!リビングに習字が

 飾ってあったぞ。

 筆ならちゃんと書いたのでは?」

 

お父さんと子どもは

リビングの習字を見つめました。

 

それでは読者のみなさんもごらんください。

 

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拡大して見てみましょう。

 

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さらに拡大!


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お父さんと子ども

「ああ~っ。」

 

お父さん

「たしかに『サ』・・・。」

 

もう『サ』しか目に入らない(笑)

「美しい心」なんてどうでもいい(笑)

 

 

 

お父さん

「今まで何回書いたんだよ。」

「こうなる前に誰か言ってあげてよ。」

「でも・・・気づかないかも(笑)。」

「世間と本人のギャップ、

 なんか笑えるw」

 

読者のみなさん、どうですか?

気づきますか?

 

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『サ』という意識で見れば

明らかに『サ』と気づきます。

ですが、ふつうは気づかないでしょう。

 

 

 

2 誤字とは何か

 

倫理の「倫」の字の

「冊」のような部分。

その中身がカタカナの『サ』だと思って

実際に『サ』と書いている。

 

これは厳密に見れば

「倫」ではないので

 「倫」の誤字

といえるでしょう。

 

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でも、見て下さい。

何の先入観も持たない人が

この文字を見れば

100人中100人が「倫」と

読むのではないでしょうか。

 

そうすると

この文字は「倫」と読めるので

誤字ではない

とも言えます。

 

どこまでが誤字で

どこまでが誤字ではないのか

 

お母さんは

「力を入れ過ぎずに

 文字を書いてもらうために

 『サみたいなもの』と

 確かに言いました。」

「私はそう書いています。」

と言っていました。

 

つまり、お母さんは確信犯なのです。

 

笑っているそこのあなた!

 

あなたの名前の文字は

大丈夫ですか?

 

 

他にも

2つの異なる文字なのに

くずして書くと

似てきてしまうことがあります。

たとえばこんな話があります。

 

上杉家関係の古文書を解読されている

la_cometa_rossaさんのツイッター

 

書く方の意識した文字と

読む方の意識した文字が違うとき。

その線の集まりは、誤字なのでしょうか。

 

どこまでが誤字で

どこまでが誤字ではないのか。

 

誤字の「誤」はどんな場合を表すのか。

 

直感的にはかなり深い問題のように

感じています。

 

画像認識、文字認識(OCR)として

機械的に分析すべき話かもしれません。

 

機会を改めて

もう少し深めて考えてみたいと思います。

 

それにしても

思い込みってこわいですね。

子どもにとっては

(早くもないですが)

気づいてよかったと思われます。

 

お父さんはこの時以来

リビングの習字の文字を見るたびに

ニヤニヤしてしまうらしいです。

 

 

 

いつも読んでいただき

ありがとうございます。

 

 

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Instructions on Ethics
Artist:Unidentified Artist
Period:Edo period (1615–1868)
Culture:Japan
Medium:Ink on paper
Dimensions:8 1/2 x 6 in. (21.6 x 15.2 cm)
Classification:Illustrated Books

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/57846

 

 

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 上杉謙信の手書き文字から作った

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