もじのすけ の文字ブログ

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文字について考えたことをつづっています

あの人の字をなぞってみた(5)

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【目次】

(冒頭の作品)

Cluster of Yamachawan Dishes Fused Together in Kiln

Period:Kamakura period (1185–1333)
Date:13th century
Culture:Japan
Medium:Stoneware with ash glaze, fused together in the kiln (Tokoname ware)

Cluster of Yamachawan Dishes Fused Together in Kiln | Japan | Kamakura period (1185–1333) | The Met

 

 

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もじのすけです。

 

1 はじめに

 

今回は、久しぶりの

なぞってみたシリーズです。

誰の手書き文字なのか、を

皆さんに考えていただくため、

名前を伏せています。

 

これまでの名前を伏せた

なぞってみた記事はこちらです。

サムネイルで気になったものがあれば

寄り道して下さいね。

 

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

mojinosuke.hatenablog.com

 

 

 

今回からちょっと

趣向を変えてみます。

 

これまでは、

クイズ編と性格読み取り編を

ワンセットにして

どちらも名前を伏せていました。

ですが、これからは、

ランダムにしようと思います。

 

つまり、

クイズの記事と

性格読み取りの記事のアップを

不規則にします。

 

クイズ編の人だけ、

性格読み取りの人だけ、

という場合も

出していこうと思います。

 

クイズ編の記事タイトルでは

名前を伏せます。

他方で、

性格読み取り編の記事タイトルは

書いた人の名前を明示しようと思います

 

歴史上の有名人の

手書き文字ばかりですので、

皆さんも

お時間があれば、 

適宜、プリントアウトして

なぞってみて下さいね。

 

紙の上の手書き文字をなぞってみると、

正解がわかった後に

実感がこみあげてくると思いますよ。

 

プリントアウトが面倒という方や

全部のなぞりがちょっと、という方は

画面で文章の一部をなぞってみても

いろいろとわかるかもしれません。

 

ぜひ、文字をなぞりながら、

クイズに答えてみてくださいね。

 

 

前置きが長くてすみません。

さらに恒例のご注意を2つ。

 

  

2 文字なぞり遊びのおさらい

 

問題に入る前に、 

毎度のことですが、一応文字なぞり遊びの

おさらいをしておきますね。

 

段取りは以下のとおり。

1 有名人の公開された手書き文字を

  紙にコピーする。

2 紙上の手書き文字をなぞる。

3 なぞってその人の性格を感じる。

以上終わり。

あっさりするほど簡単です。

 

 

 

3 文字なぞり遊びの注意点のおさらい


続いて、権利関係で

知っておくべきポイントは

以下のとおり。

 

公開された手書き文字と

それを載せている媒体

(出版物、HPなど)が、

適法に公開されたものであれば、

誰の手書き文字であっても

それを紙にコピー(複製)して、

自分でなぞって楽しむ限りでは、

著作権法上適法です

(私的使用のための複製

 著作権法30条)。

 

この結論だけは知っておいてください。

 

 

 

4 この書を書いた有名人は誰?

 

 4-1  問題

それでは、さっそく見てみましょう。

この書を書いたのは誰でしょうか。

 

もちろん歴史上の有名人です。

 

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(出典の引用は本文末に記載)

 

これは

お手紙の右側、つまり前半です。

 

 

どうでしょうか。 

 

これだけでわかったら、

いろんな意味ですごいです。

 

ひらがなが多いですね。

 

 

それでは、

お手紙の左側、後半を示します。

 

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「わかるか!」

という声が聞こえてきそうです。

 

 

 

 

 

 4-2  ヒント1

文字から読み取れる情報をもとに

ヒントを。

右側(手紙前半)

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左側(手紙後半)

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よく見てください。

ひらがなが多いですね。

この手紙は署名も押印もありません。

 

この手紙を書いたのは

男性でしょうか。

女性でしょうか。

 

 

上杉謙信の手書き文字は、

流れるように柔らかい字で、

女性かと思わせる点もありますが、

筆の運びから

明らかに男性の字だとわかります。

 

mojinosuke.hatenablog.com

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上越市史 別編1 上杉氏文書集一 別冊(編集:上越市史編さん委員会 発行:上越市。平成15年)P146 上杉謙信いろは折手本)

(原本は米沢市上杉博物館蔵) 

 

 

 

なぞるとわかりますが、

今回の手紙の字は

男性的な印象も与えるような

女性の字です。

 

今回は

なぞってみたシリーズ初の

女性の手書き文字

です。

 

 

 4-3  ヒント2

 

引用元の本の釈文を書きます。

(釈文の著者は本文末尾に記載)

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御文たしかに

うけたまはり候ぬ。

もとさ候まじき

ことならばこそハ、

世中ならひに

候。おどろくべからぬ

ことに候。かやうの事

の候へバこそ、心も

よくもなることに

候へ。いたくおもふ

 (前半終わり)

 

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こと候はぬも、

かへりておそれ

あることに候。

仏道のなれといのる

ことばかりこそ候べ

く候へ。

はゝ(母)がなげきは

あさからぬことに候。

なぐさむべし

ともみえ候はず、

あやうきほどに候。

七月二十五日

(以上 後半終わり)

 

 

 

ちょっと脱線させてください。

ちゃんとヒントに

つながっているので

正確には「脱線もどき」です。

 

ケチをつけるつもりではなく、

細かい話なのですが、

釈文の1文字に異議ありです。

 

もじのすけ的には、

最後から3行目は

「ともみえ候はず、」

ではなく

「ともみえ候はぬ。」

だと思います。

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最後の1文字を見てください。

 

「れ」みたいですよね。

これは「ず」ではなく「ぬ」です。

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比較する物として

同じ手紙の6行目

「おどろくべからぬ」の

最後の文字をみてください。

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この最後の1文字は

釈文でも「ぬ」としています。

 

他にも2行目の最後の1文字も

釈文では「ぬ」としています。

下の画像は「候ぬ」です。

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失礼しました。 

脱線から戻りましょう。

 

 

手紙の最後の方です。

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最後の方はこうなります。

 

「はゝ(母)がなげきは

 あさからぬことに候。

 なぐさむべし

 ともみえ候はぬ。

 あやうきほどに候。

 七月二十五日    」

 

ひょっとすると、

古文を習った人には

違和感があるかもしれません。

一見すると

「候はぬ」は間違いで

「候はず」が正しそうです。

 

「候はぬ」は連体形です。

「ぬ」は打ち消しの

助動詞「ず」の連体形でしょう。

 

「ず」という終止形ではなく、

「ぬ」という連体形なのは、

どうしてなのでしょうか。

 

この疑問は、

こちらのヤフー知恵袋が参考になります。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

ちゃんと知恵袋を読みましたか?

 

ちゃんと読んでくださった方には

この知恵袋の回答は

ヒントになっています。 

 

いじわるはしませんので、

ヒントの中身を言いますと、 

要するに、

「この手紙は中世の手紙だ」

ということです。

 

ということで

途中、脱線もどきもありましたが

この手紙を書いたのは、

中世の女性です。

 

 

 4-4  ヒント3

 

今回の手紙を訳してみます。

(もじのすけ勝手訳。誤訳御免)

 

「お手紙、確かに頂戴しました。

あり得ないことこそ

世間ではよく起こることなのでしょう。

このような事があればこそ

心がよくなっていくのでしょう。

あれこれと思うことはありませんが、

我が身を振り返って恐れ多いことだ

と思っています。

仏の道理が成就するようにと

祈るばかりです。

母としての私の嘆きは

浅くはありません。 

(この嘆きは)

なぐさめようがあるとも思えません。

あやういくらいにつらいです。」

 

(以上 勝手訳終わり)

 

 

 

・・・どうでしょうか。

 

どうやら

大変つらい経験をされたようですね。

書き出しからしばらくは

気丈に振る舞っていますが、

最後の方は、

母としての嘆きを吐露しています。

 

 

 

ですが、

もう一度字を見てください。

それでも堂々としていませんか。

 

右側(手紙前半)

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左側(手紙後半)

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この人は、

つらい経験をしても

しっかりしている。

そんな女性です。

 

 

 4-5  ヒント4

ここからは

文字以外からの外部情報も

ヒントにします。

 

今回のつらい出来事は、

どうやら娘さんが

本人より先に亡くなってしまった

ということのようです。

 

このお手紙は、

慰めのお手紙を受け取った

返事の手紙のようです。

 

よほどの気丈さですよね。

女性の筆跡ではありますが、

男っぽいところがあるくらい、

力強い文字を書いています。

 

こんな力強い人の夫は

超有名人です。

日本史を習った人で

知らない人はいないでしょう。

 

奥さんも有名で、

これだけ力強い人だとすると?

 

 

さあ誰だ?

 

 

 

銀閣を建てた

室町幕府8代将軍足利義政の妻

日野富子

ではありませんよ。

 

今回の旦那さんは

もっともっと有名です。

奥さんも

日野富子よりもっと有名です。

 

 

 

 

 4-6  ヒント5

この人の夫も、

お父さんも弟も甥も

日本を動かした人物です。

 

この人の息子2人は

日本を動かす立場にありましたが

非業の死を遂げています。

 

というか、

この女性本人も

日本を動かした人物

といってよいでしょう。

 

もうわかりそうですね。

 

 

 

 4-7  最終ヒント

 

最終ヒントです。 

この表紙画像に顔が出ています。 

www.shogakukan.co.jp

 

 

 

 

 

 

 

5 正解

 

正解は、

鎌倉幕府初代将軍

源頼朝の妻

北条政子

でした。

 

北条政子 - Wikipedia より

 

北条政子座像の画像はこちらです。

https://www.google.co.jp/search?q=%E5%8C%97%E6%9D%A1%E6%94%BF%E5%AD%90&rls=com.microsoft:ja:%7Breferrer:source%3F%7D&rlz=1I7WQIA_jaJP514&dcr=0&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwiM4f_wo6nWAhWMfbwKHV8RCyoQ_AUICigB&biw=1778&bih=984

 

 

北条政子

父は、北条時政

弟は、北条義時

甥は、北条泰時

 

息子は、

鎌倉幕府第2代将軍の源頼家

そして第3代将軍の源実朝

 

北条政子

鎌倉幕府の実権を握り、

尼将軍

とさえ呼ばれていました。

 

鎌倉幕府の経過を描いた

吾妻鏡では

鎌倉殿

とされているようです。

 

なお、

今回の問題に使わせていただいた画像は

いずれも

「書の日本史〈第3巻〉鎌倉/南北朝」(今井庄次編)(平凡社 初版 昭和50年)P128、129から、

釈文は貫達人氏のものから、

引用させていただきました。

 

ちなみに今回の

北条政子の手紙の原本は

京都高雄の神護寺

保管されています。

(北条氏は平家なので

 「平政子」とされています。)

 

北条政子の書状が京都にあるというのは

不思議な感じもしますね。

 

神護寺のHPでは

この手紙の由来を書いています。

 

神護寺の上覚上人が

娘の大姫を亡くした北条政子

お悔やみの手紙を送りました。

今回の手紙は、北条政子

上覚上人に返答したものだそうです。

 

高雄山神護寺 | 寺宝紹介 | 平政子書状

 

 

大姫と木曽義仲の息子義高の悲劇

については、

神護寺のHPにまとめられています。

このブログでは触れません。

 

 

北条政子

2人の息子(源頼家源実朝)、

2人の娘(大姫、乙姫)、

の4人の子どもを

自分より先に亡くしています。

 

ちなみに

引用元の「書の日本史」では、

今回の手紙は

誰が亡くなったときの手紙かは不明、

としています。

 

いずれにしても、

この手紙からは、

我が子に先立たれた母親の悲しみが

現代でも変わらないものとして

切々と伝わってきます。

 

文字をなぞらせてもらうと、

時代、性別を超えて

気持ちが伝わってきます。

 

 

 

6 文字なぞりのススメ

 

いつか

北条政子の手書き文字をなぞった感想を

記事にしたいと思います。

 

この記事を読まれた皆さんも

お時間があれば

答えがわかった後でも

ぜひなぞってみてください。

 

生身の北条政子

 感じられる」かも?

 

 

今回はここまでとします。

おつかれさまでした。

 

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涅槃図
Death of the Historical Buddha (Nehan-zu)

Period:Kamakura period (1185–1333)
Date:14th century
Culture:Japan

Death of the Historical Buddha (Nehan-zu) | Japan | Kamakura period (1185–1333) | The Met

 

  

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        ↓
 http://mojinosuke.hatenablog.com/entry/2017/04/06/130000

 

 

  

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